2003年に刊行され140万部のミリオンセラーに、翌年公開の映画も興行収入48億円の大ヒットとなった『いま、会いにゆきます』。あのベストセラー作品を生み出した小説家・市川拓司さんの自伝的著書『私小説』が、主演・瀬戸康史さん×上野樹里さんでテレビドラマ化される。

このドラマの中で、市川さんをモデルとした主人公の手による作品として登場するのが、葉っぱ切り絵アーティスト・リトさんの作品だ。
発達障害を抱え、社会生活で数々の困難に直面しながらも、「傾いた個性」があったからこそ強くなり、小説家になれた、という市川さん。会社員時代は怒られてばかりで、発達障害による過集中という特性を生かせる仕事として、葉っぱ切り絵アーティストの道に進んだリトさん。
2回りの歳の差がありながらも、不思議なほどの共通点をもつ2人が初対面。温室のように緑が溢れる市川さんのご自宅で、それぞれの偏った特性を乗り越えてきた道筋と創作活動について語り合った。

1962年、東京都生まれ。作家。会社勤めをしながらネット上に投稿していた小説が注目され、2002年、39歳のときに『Seperation』(アルファポリス)でデビュー。2003年発表の『いま、会いにゆきます』(小学館)が、映画化・テレビドラマ化され、140万部のベストセラーとなる。2018年には映画版が韓国でリメイクされた。『恋愛寫眞 もうひとつの物語』『こんなにも優しい、世界の終わりかた』『そのときは彼によろしく』(いずれも小学館)他、著書多数。ヨーロッパ・アジアなど世界各国で翻訳され、多くのファンを集めている。『発達障害だから強くなれた』『私小説』(いずれも朝日新聞出版)では、ADHD/ASDと診断された自らの「偏った個性」を認めることから輝き始めた日常を綴っている。

1986年生まれ。神奈川県出身。葉っぱ切り絵アーティスト。自身のADHDによる偏った集中力やこだわりを前向きに生かすために、2020 年より独学で制作をスタート。SNSに毎日のように投稿する葉っぱ切り絵が注目を集める。TV番組や新聞など国内メディアで続々と紹介されるほか、世界各国のネットメディアでも、驚きをもって取り上げられる。全国各地にて開催中の作品展が反響を呼んでいる。『いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』『葉っぱ切り絵絵本 素敵な空が見えるよ、明日もきっと』(いずれも講談社)など作品集は累計20万部を突破。新刊『葉っぱ切り絵バースデーカード&12星座カードBOOK 覚えてるよ、君の大切な記念日』が4月17日発売に。
緑に囲まれていたい
リト うわあ、緑がいっぱいですね! こういう家にいつか住めたらいいな、って思っちゃいました! いやあ、憧れます!
市川 これをお見せしたかったんです。葉っぱにああいう細密な細工をしているような方は絶対好きだと思って。リトさんは、葉っぱ切り絵を始めて3年目なんですってね? ぼくも作家デビュー3年目までは、この土地に建っているアパートの小さな部屋に、一家3人で住んでたんです。そのアパートが取り壊しされることになって。大家さんから格安で土地を譲ってもらって、ようやくこの家を建てたんです。

リト 残念ながらぼくの部屋はごく普通で。ここは、ぼくのファンが「リトさんはこんなところに住んでいるんだろうなあ」とイメージするような家だと思います。
市川 家を建てることにしたら野望が膨らんじゃって。植物が大好きだから温室は絶対に作りたいとか、アクアリウムをずっと作ってるので専用のスペースも必要だとか。これをいちばん最初、メインに考えましたね。アクアリウムの水槽は、200キロ以上あるので、支えるのも普通の棚じゃ無理なんで、特別なのをお願いして。棚の下は排水溝になっていて、水道から直接水を水槽に入れて、排水溝に直接流せるようにしました。

リト いやあ、すごいな! じつは、ぼくが世に出るきっかけになった初めての作品も、アクアリウムなんです。
市川 ジンベエザメだ!
リト そうです。それまではSNSに投稿しても、1000いいねが限界だったのが、この作品投稿したら初めて3万くらい「いいね」がついて。テレビの取材オファーがきたり、海外メディアさんが注目してくれて連絡がきたりして。転機になった作品なんです。
