2023.04.11

小学校中退から帝国大学へ! 帝大教授と全面対決した『らんまん』モデル植物学者の情熱

朝ドラ『らんまん』の主人公・槙野万太郎のモデルとして注目をあつめる牧野富太郎。

彼は日本の植物学を独力で切りひらいた天真爛漫な植物学者でした。

幼いころから植物をひたすら愛し、その採集・分類に無我夢中。

ひたむきに研究に没頭しつづけた「日本の植物学の父」が採集した標本は、なんと60万点、命名した植物は2500あまり。

こんな牧野の研究生活は順風満帆とはいかず、じつは苦労の連続でした。

つぎつぎと新種の発表したりなど大活躍を見せる一方で、植物学教室の矢田部良吉教授との摩擦が生じ、ぶつかりあってしまうのでした…。

独特の牧野節でつづった波乱万丈な「わが半生」(『牧野富太郎自叙伝』所収)を一部抜粋、編集しながら紹介します。

時の権威・帝大の矢田部教授との出会い

私の長い学究生活は、いわば受難の連続で、断えず悪戦苦闘をしながら今日に来た。

私は土佐の出身で、学歴をいえば小学校を中途までしか修めないのであるが、小さい時から自然に植物が好きで、田舎ながらも独学でこの方面の研究は熱心に続けていたのである。

それで明治17年に東京へ出ると、早速知人の紹介で、大学の教室へ行ってみた。

時の教授は矢田部良吉氏で、松村任三氏はその下で助手であった。

それで矢田部氏などに会ったが、何でも土佐から植物に大変熱心な人が来たというので、皆で歓迎してくれて、教室の本や標品を自由に見ることを許された。

それから私は始終教室へ出かけて行っては、ひたすら植物の研究に没頭した。

その当時、日本にはまだ植物志というものが無かったので、一つこの植物志を作ってやろう──そういうのが私の素志であり目的であった。

もっとも当時は植物学が今のように発展せぬ時代だから、そんな物を出版したところで売れはしない。

で出版を引受ける書店のあろう筈もないので、自費でやることを決心し、取敢えず『日本植物志図篇』という図解を主にしたものを出版した。

  • 【新刊】バラの世界
  • 【新刊】ツァラトゥストラはこう言った
  • 【新刊】異国の夢二
  • 【学術文庫】2023年7月新刊
  • 【選書メチエ】2023年7月新刊
  • 【新刊】新版 紫式部日記 
  • 【新刊】妖怪学とは何か
  • 【新刊】人間非機械論
  • 中華を生んだ遊牧民
  • 室町幕府論