2023.04.12

15人大家族、ドンドン積みあがる借金の山。苦悩する『らんまん』モデル植物学者を支えた存在

朝ドラ『らんまん』の主人公・槙野万太郎のモデルとして注目をあつめる牧野富太郎。

彼は日本の植物学を独力で切りひらいた天真爛漫な植物学者でした。

幼いころから植物をひたすら愛し、その採集・分類に無我夢中。

学界の権威による妨害や軋轢などおかまいなし。

ひたむきに研究に没頭しつづけた「日本の植物学の父」が採集した標本は、なんと60万点、命名した植物は2500あまり。

牧野の苦労は、学界の権威との摩擦だけにとどまりませんでした。そこには貧しさとの闘いもあったのでした…。

独特の牧野節でつづった波乱万丈な「わが半生」(『牧野富太郎自叙伝』所収)を一部抜粋、編集しながら紹介します。

楽ではなかった暮らし

矢田部先生罷職の事があった直後、大学の松村任三先生から郷里の私のところへ手紙で、「大学へ入れてやるから至急上京しろ」といってきた。

私は「家の整理がつき次第上京する、よろしく頼む」と書いて返信し、明治二十六年一月上京した。

やがて私は、東京帝国大学助手に任ぜられ、月俸十五円の辞令をうけた。

大学へ奉職するようになった頃には、家の財産も殆[ほとん]ど失くなり、家庭には子供も殖えてきたので、暮らしはなかなか楽ではなかった。

私は元来鷹揚[おうよう]に育ってきたので、十五円の月給だけで暮らすことは容易な事ではなく、止むなく借金をしたりした。

借金もやがて二千円余りも出来、暮らしが面倒になってきた。

  • 【新刊】バラの世界
  • 【新刊】ツァラトゥストラはこう言った
  • 【新刊】異国の夢二
  • 【学術文庫】2023年7月新刊
  • 【選書メチエ】2023年7月新刊
  • 【新刊】新版 紫式部日記 
  • 【新刊】妖怪学とは何か
  • 【新刊】人間非機械論
  • 中華を生んだ遊牧民
  • 室町幕府論