2023.04.03
目からウロコ…東大の総長が「自分の頭で考えよ」という物言いを「危うい」と感じた理由
「自分の頭で考える」?
「自分の頭で考えなさい」。わたしたちがしばしば耳にする言葉です。
とくに4月を迎え、いよいよ「新生活」がはじまったという方は、あたらしい環境での訓示などにおいて、「自分の頭で考える」ことの重要性を強調される機会もあるかもしれません。
しかし、「自分の頭で考える」のは本当によいことなのでしょうか? そもそも「自分の頭で考える」というのはどういう意味なのでしょうか? さらに、考えることや、知性を用いることを得意とする人たちは、「自分の頭で考える」ことをどのように位置付けているのでしょうか?
たとえば、日本の知性の「トップ」とも言える東京大学の総長はどのようなことを語っているか。
フランス文学や映画の研究者で作家としても知られる蓮實重彥氏は、1997年4月1日から2001年3月31日まで、東京大学の第26代総長をつとめていました。
ここで注目したいのは、蓮實氏が東京大学の学内文書である『教養学部報』419号(1998年4月)において、新入生に向けて語ったメッセージです。そこで蓮實氏は意外にも、「自分で考えよ」というメッセージのあやうさについて指摘しています。
以下、蓮實氏のさまざまな講演やあいさつ、各所に寄せた文章が収録された『齟齬の誘惑』という書籍から引用します(読みやすさを考慮して、改行の位置を編集しています)。