2023.04.17

白骨化した遺体が覆う平原を歩く……。中国の漢詩にみる戦争の壮絶な姿!

歴史的にも戦乱の多かった中国には、さまざまな立場から戦争を描いた作品が残されている。遠い昔のことでも、その悲惨さは現代と変わらない。戦争を描き、また批判する漢詩を読みながら、中国の伝統を考える(鈴木虎雄著『中国戦乱詩』から紹介する)。

哀しみは7種類?

まずは、『三国志』で有名な、魏・蜀・呉の三国が天下を分けて争った三国時代に、王朝・魏(ぎ)の王粲(おうさん)が詠んだ漢詩「七哀詩(しちあいし)」をみてみよう。「七哀詩」の「七哀」については、〈(唐代注釈家の)古説では「痛、義、感、怨、耳目聞見、口歎、鼻酸(びさん)、の七の場合にかなしむから七哀という」〉が、実際のところはよくわからない。

〈この題での古人の作例をみると夫婦の別れの悲しさ、古人の陵墓(りょうぼ)を見ての痛ましさ、故郷を遠くはなれての思い等、種種のことをうたってあるから、鄙見(ひけん)では当時哀の対象として七種の項目があったのではあるまいかとおもわれる。〉まずは、本文を見てみよう。

西京亂無□ 西京(せいけい) 乱れて象(しょう)なし
豺虎方遘患 豺虎(さいこ) 方(まさ)に 患(わざわい)を遘(かも)う
復棄中國去 復(ま)た中国を棄て去って
委身□荆蠻 身を委(い)して荆蛮(けいばん)に適(ゆ)く
親戚對我悲 親戚 我に対して悲しみ
朋友相追攀 朋友 相(あい)追(つい)攀(はん)す

〈長安地方も騒乱となり治国の大道が失われ、豺虎のような盗賊どもがわざわいをかまえるようになった。そこで自分は中原の地を棄ててわが身をなるがままにまかせて南のかた荆州の方へゆくのである。親戚の人たちは自分に対して悲しみ、朋友らはあとから追いすがって別れを惜しんでくれる。〉

古今東西に、こうした別れを嘆く詩は多い。ここでは、騒乱で盗賊も出てきたため、町を捨て去る自分に、人々が別れを惜しんでくれている。その直後に詩人が目にした驚くべき光景が、続く詩に書かれている。

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