2023.04.15

気高く生きるためのTIPS…だけじゃない!誤解され易いニーチェの洞察の奥深さ《21世紀の必読哲学書》


混迷を深める21世紀を生きる私たちが、いま出会うべき思考とは、どのようなものでしょうか。

《21世紀の必読哲学書》では、SNSでも日々たくさんの書籍を紹介している宮崎裕助氏(専修大学文学部教授)が、古今の書物から毎月1冊を厳選して紹介します。

第3回(3)(全3回)はフリードリヒ・ニーチェ『道徳の系譜学』(中山元訳、光文社古典新訳文庫/木場深定訳、岩波文庫/ニーチェ全集第11巻、信太正三訳、ちくま学芸文庫)です。

(毎月第2土曜日更新)
SNS社会を先どっていたかのようなニーチェのルサンチマン論(「SNSに渦巻く不条理はニーチェが憎んだものだった!〈ルサンチマン〉の害悪とは」)。しかしニーチェが本当に直面していた問題とは、何だったのでしょうか。いよいよその核心に迫ります。
(『善悪の彼岸 道徳の系譜』信太正三訳、ちくま学芸文庫)

「精神の高貴さ」を求めるプロジェクト

ニーチェの『道徳の系譜学』は、城戸淳の言葉を借りて要約すれば「良識と同情の名のもとで魂の平準化・同質化を追求しようとする態度としての卑俗さ」を斥け、そうした「卑俗さを道徳的に肯定するような末人的イデオロギーに対抗する政治闘争」である。それは「精神的な位階を高めようと努力する高貴な人々の同輩意識」に訴えることで「精神の高貴さを追求するような文化を擁護し促進するプロジェクト」なのだとみることができる。
(城戸淳『ニーチェ──道徳批判の哲学』講談社選書メチエ、81-82頁。本稿を執筆するうえで本書から多くを学んだ。『道徳の系譜学』理解に必須の副読本であり、ぜひ併読することをおすすめしたい)

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