“古い友人と統一地方選の話をしてたら、いきなり「鷲津さんの演説やったら聞きに行くのに」と言われた”
“統一地方選前にこのドラマやってくれたのは大きいな”

3月27日に最終回をむかえた2023年1月期のドラマ『罠の戦争』。草なぎ剛さん主演で政治の世界のリアルを描き、最終回の満足度100%に達したことも話題になった。そして、最終回から時間が経つ今もなお、冒頭のようなツイートがなされている。
そう。今回の統一地方選を、このドラマのドロドロとした選挙戦と重ねる人が多いのだ。

ドラマの中では、こっそり賄賂を送ろうとする政治家がいたり、賄賂を贈ったとスキャンダルに巻き込もうとする政治家がいたり、親の後を継ぐつもりで何もしない坊ちゃん議員がいたりと、かなりリアルなエピソードが描かれていたからだろう。
そして、選挙事務所のスタッフは、さぞやそのドロドロとしたリアルを見ているのだろうとも感じたのでは……?

そんなリアルを、「ウグイス嬢」として見た人がいる。
漫画家で小説家の折原みとさんだ。
実は「勝率100%のウグイス嬢!!」だという折原さんが見たものとは。そして「いい候補者と悪い候補者」の見分け方とは――。

この時期、私は仕事そっちのけで忙しい

2023年、春。4年に一度の「統一地方選挙」が始まった。
4月9日(日)に都道府県・指定都市の選挙が行われ、そして4月23日(日)に、指定都市以外の市・特別区・町村の選挙が行われる。

この時期、私は、仕事そっちのけで(?)忙しい。
なぜって……?

それは、私の趣味のひとつが「ウグイス嬢」だから!
しかも、何をかくそう、今までの選挙戦、9戦9勝。無敗の「勝率100%ウグイス嬢」なのだ!!

本業は漫画家・小説家である私が、初めてウグイス嬢をつとめたのは、9年ほど前のことだ。
地元の市議会議員選挙に、日舞の師匠の息子さんが初出馬することになり、門弟有志で選挙のお手伝いをしたのがキッカケだった。

ご存知の通り、選挙における「ウグイス」とは、選挙カーに乗ってアナウンスを行う「車上運動員」のことだ。
男性の場合は「カラス」と呼ばれる。

街宣車でウグイス中の折原さん 写真提供/折原みと

司会やDJなど、普段から声の仕事をしている方が、選挙の時にウグイスとして雇われることが多いが、特に資格もいらないので、私のようなド素人でも、やろうと思えばできてしまうのだ。

 

ウグイス嬢の役割とは

当時の私は、有権者として投票に行くことはあっても、候補者側に立つのは初体験。ウグイスなんて右も左もわからない。
しかし、思い切ってチャレンジしてみると、これがなかなか面白かった!!

ウグイス嬢の役目は、もちろん、候補者の名前を有権者のみなさまに覚えていただくこと。
そして、候補者の魅力をアピールし、イメージアップを図ることだ。

初めて選挙カーに乗った日、ベテランの先輩ウグイスにこう言われた。
「あそこを歩いている、あの人を振り向かせる!と思ってアナウンスしなさい」……と。

ただ漠然と候補者の名前を連呼しているだけでは、人の心をつかむことはできない。
そのためには、何が必要なのか?

別の先輩ウグイスは、こう言った。

「言語能力の高い人は、ウグイス嬢に向いている」……と。

選挙カーのアナウンスは、原則としては「候補者の名前の連呼のみ」と定められているが、いくらなんでも、それでは間が持たないので、多少の色をつける。
候補者の簡単な経歴やキャッチフレーズなど。
そこに、ちょっとしたアドリブをはさむのが、ウグイスの腕の見せ所なのだ。

写真提供/折原みと

例えば、街宣中に桜並木を通れば、
「桜がきれいに咲いております。来る投票日には、○○(候補者)の桜も満開となりますよう、みなさまのお力添えをお願いいたします」
なんて言ってみる。

犬の散歩をしている方を見かけたら、
「○○(候補者)も犬を飼っております。わんちゃんにもやさしい町作りをめざします」
というひと言を加えたりする。

沿道で手を振ってくださる方を見つけたら、
「ありがとうございます!!」
と、すかさずお礼を言う。

支援者の方に感謝を伝えると同時に、候補者が支持されていることを、周囲にアピールすることができるので、これはかなり効果的なのだ。

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その時に目に入るものや状況を、瞬時に判断して取り入れる、臨機応変な対応力。それを即座に言語化するボキャブラリー
そして、
謙虚な感謝の気持ちと、「真心」も大切だ。