最近、TVや新聞、あるいは病院のホームページなどで、「ロボット(支援)手術」というキーワードを見る機会が増えているのではないでしょうか。
「あの病院はダヴィンチで手術をしてくれるらしい」、あるいは「ヒノトリっていう国産のロボットもいる(?)らしい」という評判を聞くこともあるかもしれません。新幹線を降りるとロボット手術のポスターがずらっと並んでいる、という駅もあります。
1つの治療手段、あるいは1つの医療機器がこれほど一般的に注目されるのは極めて珍しい現象です。しかし、外科医以外の皆さんは、この「ロボット達」が一体どのような姿をしているか、イメージできるでしょうか?
医療以外の分野、特に製造業では、すでにロボットが大活躍しています。例えば自動車工場に見学に行くと、ミリ以下の精度で制御された産業用ロボットが溶接や塗装などの作業に黙々と「従事」している姿に驚かされます。
用途によっては、彼らは人の五感を超えるセンサーを搭載していて、対象物を瞬時に見分け、いわば自発的に作業を行っています。飛行機だって、高高度飛行中は自動操縦ですから、「何百人もの命を預かる巨大なロボット」と考えることができるかもしれません。
こう考えると、もしかして最近の「ロボット手術」は、ヒト型ロボットが患者さんの臓器を切ったり縫ったりしていて、外科医は管制塔からモニターしているだけなのでしょうか? コーヒーでも飲みながら……。
da Vinci手術を「のぞいて」みよう!
何はともあれ、現在世界で最も普及している米国製のロボット支援手術システム、da Vinci(Intuitive Surgical社)を用いた手術を「のぞいて」みましょう(図1、大阪公立大学)。

「彼(Xi システム)」を使うには、まず患者さんの体に挿入したトロッカー(金属製のストローのような装具で、太さは1cm弱)に、ダヴィンチの本体(正式にはペイシェントカートと呼びます)から伸びた4本の「腕」を連結させます(ドッキング、と呼びます)。そのうちの1本から「目」(内視鏡、筒状のカメラ)を、残りの3本からは「いろいろな手」を挿入して準備完了です。
この段階で、術者は「操縦席(コンソール)」に座ります。通常、この操縦席は患者さんと同じ手術室の片隅に置かれていて、患者さんと連結している本体と離れていますが、タワー型の制御部分を介して有線接続されています。そしていよいよ、操縦席の上部にある双眼のレンズを「のぞく」わけです。

「のぞいてみよう!」とわざわざ強調しているのは、このような方法で外科医が画面を「のぞきこむ」ことで、あたかも自分が小人になって患者さんの体内にいるような、単なる3Dを超えた「没入感」が得られることが、いわゆるダヴィンチ手術の最大の特徴だと私には感じられるからです。
なお、この「目」は、第2回連載で紹介した蛍光イメージングのシグナルを画像化することもできます。Firefly、日本語に直訳すれば「ホタル」と名付けられた機能です――なかなか洒落ていますね!