写真家・稲田美織さんが、世界中の「聖地」を撮るようになったきっかけは、2001年9月11日に起きた同時多発テロ。1991年からNYに暮らしていたが、現在は日本に拠点をうつし、国内外の聖地を撮り続けている。
時には雪山を登り、川を下り、世界各地の聖地を回りながら、自然の力を感じてきた稲田さん。そこには、人間が浅はかな気持ちで壊してはならない大切なものが確実に存在する。
地球の素晴らしさを見つめなおすためにも、稲田さんが出会った様々な「聖地」を写真と共に紹介していく連載第3回。第1回では伊勢神宮との出会いについて、第2回は伊勢神宮で見たものについて写真と共にお伝えした。第3回は伊勢神宮での歴史ある「リユース」の驚きの手法をお届けする。
100年前からリユース
現在世界で叫ばれているSDGsを、伊勢神宮ではなんと丁度100年前の1923年に、計画実行されていたことを連載第1回に書き、2回では何世代にもわたって人々が森と木々を大切に育てた話を書いたが、今回は「その木々の使われ方」を書いてゆこうと思う。
私が驚いたのは、木を育てることだけにとどまらず、木材を大切に成型し、それらの材木を伊勢神宮ではずっと前からリユースしてきていたことだった。
伊勢神宮の内宮に訪れた人は、五十鈴川に架けられた宇治橋を渡る。その橋は現世から太古の世界に私たちを導き、そしてまた日常から神様の世界に私たちを誘う。その際にくぐる、大きな鳥居が実は再利用(リユーズ)された木材で造られたものであることをご存じだろうか。最近では、冬至の頃鳥居の真ん中から朝日が昇る宇治橋のポスター、伊勢神宮特集のテレビ番組や雑誌などでその鳥居を目にする機会もあるかもしれない。

その鳥居に使われている木材は、なんとその前の20年間、神様が鎮座されていた御正宮の両脇に使われている一番大切な棟持柱だったのだ。しかも宇治橋入り口の鳥居は外宮の御正宮の柱、内側の鳥居は内宮の柱が使われている。私は、神様が鎮座されていた御正宮・社殿の大きな2本の柱が、宇治橋の鳥居となって存在していることを初めて知った時、本当にびっくりした。
