2023.04.24

小柄な暴言王・泉房穂明石市長、橋下徹元大阪府知事、古賀誠元自民党幹事長…元朝日新聞記者が語る3人の政治家の「似た匂い」

昨日(4月23日)に投開票された統一地方選後半戦で、兵庫県明石市に新しい女性市長が誕生した。中央政界にとっては大きな出来事と捉えられていないが、「これは政界におけるバタフライエフェクト(遠く離れた場所の小さな出来事が世界に大きな影響を及ぼす)になる」と言われている。

明石市は泉房穂氏が3期12年にわたって市長を務めてきた。全国に先駆けて「異次元の子ども施策」を実行し、市の出生数のみならず人口、税収も飛躍的に伸ばして「明石モデル」と称賛された。今回はその名物市長が、これまたお馴染みとなった「暴言」を理由に辞職(政治家引退)したために、後継市長が誕生したわけだ。

泉氏の市長任期はこの4月いっぱい。市長退任翌日の5月1日に出版される泉氏の著書『政治はケンカだ! 明石市長の12年』がいま、話題を呼んでいる。市長在任中にはけっして口に出来なかった、改革に抵抗する勢力との闘いの内幕を明らかにしているからだ。聞き手を『朝日新聞政治部』の著者で気鋭の政治ジャーナリスト・鮫島浩氏が務めている。市議会、政党、宗教団体、マスコミ、市役所職員……。泉氏が「四面楚歌」の状態でいかに闘争してきたか、同書にはすべて記されている。
発売に先駆け、鮫島氏が書いた「あとがき」を特別に公開する。

連載『政治はケンカだ!』第1回後編

泉少年は世の中の不条理を知り、冷たい社会を憎んだ

泉房穂少年は齢(よわい)十にして将来は明石市長になると決意した。冷たい社会を今より優しくするために。誰一人見捨てない政治を実現するために。

政治闘争の原点を知りたくて、桜のつぼみが膨らむ3月20日、彼が生まれ育った明石市の漁師町を訪ねた。市の西の端にある西二見。古びた板壁づくりの家が建ち並び、狭い路地がその合間を縫うように走る、ひっそりとした集落である。

明石海峡は日本有数の豊かな漁場だ。けれども市の中心部から離れた西二見は古くから強い西風が吹きつける難所として敬遠される貧しい漁村だった。

先の大戦では他の地域に先駆けて召集令状が次々に届き、激戦地へ送り込まれていった。泉さんの伯父3人も戦死している。父親は小卒、3軒隣で生まれ育った母親は中卒。貧しい漁師の家に障害を持った弟が生まれた。戦後憲法が掲げる「法の下の平等」は名ばかりの現実世界で、泉少年は世の中に連綿と続く不条理を知り、冷たい社会を憎み、優しい社会へ変えようと誓ったのである。
  
はじめて対面したのは参院選が迫る2022年夏だった。新聞社を辞めて最初に上梓した『朝日新聞政治部』のプロモーションで「対談したい方はいますか」と編集者の山中武史さんから打診され、真っ先に思い浮かんだのが泉市長だった。

明石市は大胆な子ども政策で人口も税収も伸ばし全国から注目を集めていた。泉さんが始めたツイッターのフォロワー数はウナギ登りに増え、永田町に閉塞感が漂う中で最も勢いを感じる政治家だった。私は多少の下調べはしたものの、彼の政治人生を細かく頭に入れる余裕がないまま、東京・音羽の講談社へ妻と向かった。

  • 『成熟とともに限りある時を生きる』ドミニック・ローホー
  • 『世界で最初に飢えるのは日本』鈴木宣弘
  • 『志望校選びの参考書』矢野耕平
  • 『魚は数をかぞえられるか』バターワース
  • 『神々の復讐』中山茂大