政府の情報管理に対する不安感は、2007年に5000万件もの年金情報が持ち主不明になっていると発覚した「年金記録問題」で決定的になっています。当時首相だった故安倍晋三氏は、事件発覚後に「最後のお一人に至るまですべての記録をチェックする」と断言しましたが、調査を途中で打ち切り、総理を辞めてからは一言もこの話には触れず、いまだ2000万件の年金が持ち主不明のままになっています。
しかも、年金に限らずそこかしこで政府の情報はダダ漏れ。徹底的な情報管理がなされなくてはならない河野太郎大臣のお膝元のデジタル庁が運用する企業向けサービス「GビズID」でさえ、2022年に個人情報漏れを起こしている始末です。
これでは、大切な個人情報を政府に預けるのが怖いと思うのは当然でしょう。

日弁連も異議を唱えた
さらに、預けた情報がどう使われるかわからないという不信感は、特に「マイナンバーカード」や「マイナ保険証」では顕著になっています。
加えて3月7日の閣議では、国民の不安感を煽るような決定が行われました。それまで法律で社会保障・税・災害対策の三分野に限定されていたマイナンバーの利用範囲を、国家資格の手続きや自動車に関する登録など法律の規定に「準ずる事務」まで広げると閣議決定し、政府の解釈次第でマイナンバーの利用範囲が拡大できる道筋を開いたのです。
これに対して日本弁護士連合会(日弁連)が、「利用分野・事務を拡大すれば、より広範な個人情報が番号にひも付けられた上、漏れなく・他人の情報と紛れることなく名寄せされデータマッチング(プロファイリング)されてしまう危険性が高まる」として、マイナンバー利用促進の法改正の再検討を求める会長声明を出しました。
さらに日弁連は、「法改正に対する事前のプライバシー影響評価(PIA)手続すら行わないまま、利便性や効率性のみを追求して法改正を急げば、2021年5月に成立したいわゆるデジタル改革関連法で「自己情報コントロール権」の保障が実現されていないことともあいまって、プライバシー保障上の危険性が極めて高まるものといわなければならない」と、その危険性を指摘しています。