「無限とはなんだろう」と聞かれると何を想像しますか。限りが見えない宇宙を想像したり、哲学的に考えたりする人もいることでしょう。実は、数学の世界では、この「無限」があらゆる場面に顔を出し、多くの数学者を魅了し続けてきました。
今回は、そんな「数学の中のふしぎな無限の世界」を紹介した『無限とはなんだろう』(玉野研一著/講談社ブルーバックス)の中から、無限とともに奥が深い「ゼロ」のトピックを1つご紹介します。本書では、極限としての0÷0や∞÷∞の話が展開されますが、その前段階として「0」と「割り算」について解説しています。意外と忘れているかもしれませんよ。
※本記事は『無限とはなんだろう』を一部再編集の上、紹介しています。
意外と忘れがちな「0」の話
――0÷2はいくつですか。
「0です」
その通り。どうしてだろうか。割り算を理解するには,掛け算に戻って考えよう。
a÷b=qということは,掛け算に直すと,a=b×qということだった。この場合もし,0÷2=qだとすると,0=2×q,したがってq=0となる。
それでは,
――2÷0はいくつですか。
「わかりません」
「あっ,そうだ。どんな数もゼロでは割れないのです。昔習った気がします」
その通り。今度も理由を考えてみよう。もし,2÷0=qだとすると,掛け算に直すと,2=0×q,したがって2=0となり,矛盾が生じる。したがって2÷0は,定義してはいけないのだ。
それでは,
――0÷0はいくつですか。