2023.05.15
# 年金

年金を70歳まで「繰り下げ」して、心の底から後悔した72歳男性の「大誤算」

老後の人生設計が狂ってしまった

「65歳の時点ではまだまだ健康でしたし、長い将来のことを考えて年金を繰り下げて受給しようと決めたんです。まさかその選択が裏目に出るなんて、思ってもみませんでした…」  

1949(昭和24)年4月10日生まれの近藤義貴さん(現在74歳・仮名)は、このように話します。

平均寿命が伸びて定年退職後のセカンドライフの重要性が高まっている現在、年金の「繰り下げ受給」がますます注目を浴びています。しかし誰にとっても繰り下げが正しい選択とは限りません。近藤さんのケースをもとに、説明していきます。

Photo by iStock
 

退職後、契約社員から個人事業主に  

大学卒業後に大手電機メーカーに就職した近藤さんは60歳で定年退職、それからは1年契約の契約社員として働いていました。契約社員としての年収は250万円(月額約20万8300円)ほど。さらに60歳から65歳までは、「特別支給の老齢厚生年金」を年間約123万1200円(月額約10万2600円)の年金を受給することができます。

しかし当時は働いている期間はもらえる年金が減らされてしまう仕組みだったため、実際には月に約6万7300円と減額された特別支給の老齢厚生年金(在職老齢年金)を受け取っていました。

月に4万円も年金が減額されてしまうことに、近藤さんは疑問を抱いていたそうです。

「働いていると年金が減るなんて、とうてい納得できません。そこで社会保険事務所 (当時)に確認したところ、『厚生年金から外れれば、年金は減額されない』と言われました。すでに会社でも契約社員扱いだったので、この機会に辞めて個人事業主として独立することにしたんです」(以下、「」内は近藤さんの発言)

近藤さんは社員時代の人脈を活かして仕事をもらい、その評判は口コミで広がっていきました。また会社を辞めて厚生年金から外れたことで、特別支給の老齢厚生年金も満額受け取れるようになったそうです。近藤さんの当時の年収は約600万円。自宅は持ち家で子どもたちも独立していましたし、生活にはかなり余裕がありました。

SPONSORED