2023.05.22

年間1万人近くの高齢者が転倒事故で死亡…知っておきたい、人間の「垂直姿勢」のあやうさ

昨年度のベストセラー書籍ナンバーワンとなった、精神科医和田秀樹さんの『80歳の壁』(幻冬舎新書)。実際にまだまだ80歳に時間がある人でも、親世代の姿を見ていると、80歳前後で急に歩き方が遅くなったり、姿勢が悪くなったり、からだの衰えがはっきりわかる人も多い。そこで「やっぱり80歳の壁はあるなあ」と実感する人も多いのではないか。

ではどうすればこの80歳の壁を突破できるのか?

「そのための最適解は足の親指のエクササイズです」と断言するのが、からだの専門家の勇﨑賀雄さん。彼の話題の新刊『「80歳の壁」を越えたければ足の親指を鍛えなさい』。より抜粋してお届けする第2回後編。

前編記事『歩行がままならなかった100歳がジャンプできるように…なぜ「奇跡」は起こったのか』はこちら

日本人の「足回り」は低下している?

近年、高齢者の自宅での転倒死亡事故が多発しています。日本では年間1万人近くの高齢者が転倒事故で亡くなっています。1990年代半ばまで交通事故での死亡者は毎年1万人超でした。車社会はもちろん人類に多大な恩恵をもたらしてきましたが、その裏側で大きな犠牲も生み出してきたのです。しかし、その後交通ルールの遵守、車自体の安全装置、すなわちブレーキやタイヤ、サスペンションなどの「足回り」の進化により、いまでは年間の交通事故死亡者は3000人を割っています。「足回り」が大切なのは車も人間も同じです。

しかし私は、車の足回りは近年大きく向上してきたのに対し、日本人の「足回り」はむしろ低下しているのではないかと懸念しています。

そして転倒の危険性は死亡事故だけではありません。転倒によって寝たきりになったり、転倒によって外を歩きまわれなくなることで健康を害したり。高齢者のクオリティオブライフに大きな影響を与えるのです。

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高齢者の転倒事故をなんとか減らさなければなりません。そのためにはまず、人間の「垂直姿勢」のあやうさを知ってもらうのと同時に、高齢者になると、どんなにからだが衰え、からだのバランスが悪くなるかということを知っていただきたいと思います。

長らくお茶の間の人気者だった欽ちゃん(萩本欽一さん)が自宅で階段から落ちて頭と腰を打ち、回復するまで大変だったというニュースは私にはとてもショックでした。

なぜなら、私が高校生の時、毎日、教室での一番の話題は前の夜のテレビでコント55号の欽ちゃんのやるアクロバティックな跳び蹴りやさまざまな身体的パフォーマンスだったからです。その運動神経抜群の欽ちゃんでも80歳を超えると自宅の階段から落ちるということなのです。

  • 『成熟とともに限りある時を生きる』ドミニック・ローホー
  • 『世界で最初に飢えるのは日本』鈴木宣弘
  • 『志望校選びの参考書』矢野耕平
  • 『魚は数をかぞえられるか』バターワース
  • 『神々の復讐』中山茂大