近年盛んに取り上げられ、身近になった“毒親”という言葉。
現在夫と2人の子供を持つヒロミさんも、毒親に長年苦しめられた一人でした。
ヒロミさんの母親は「おまえはダメな人間だ」「女に勉強はいらない」とヒロミさんを罵る一方、2人の弟の前では優しくて常識のある母親のように振る舞い、彼らを味方につけて大人になった後も家族ぐるみでヒロミさんを無視していました。
そんな生い立ちを抱えるヒロミさんですが、結婚して子育てが落ち着いた頃に出会ったアロマセラピーに心癒され、ついには自分の教室を開くことになりました。しかしそれを聞きつけた母親に猛反対され、心がポッキリと折れてしまいます。友人からランチに誘われても「私はそんなところに行っていい人間じゃない」という考えに取りつかれ、さらには時間の感覚すら分からないほど無気力になってしまったといいます。
毒親の呪縛から逃れるためには、現実的に何を行えばよいのでしょうか――現場で当事者支援に携わってきた藤木美奈子さんによる『親の支配 脱出マニュアル』より解説します。
「しんどくなる一方」
「今思うと、うつ病だったかもしれません」
それ以来、実家に足が向かなくなりました。
「行かなくては」と思うと、ひどい頭痛が起きるのです。年末年始、お盆などの定期的な行事には、何があろうと母のもとを訪れていたのに──。
「すべて気力で乗り越えてきた私でしたから、今回のつらさも時間がたてばましになるだろうとタカをくくっていたんでしょうね。なのに、楽になるどころか、しんどくなる一方でした」
物心ついたときから悲壮な努力を重ねてきたヒロミさん。次第に本当の自分とは、そして自分の親とはどんな人間なのかを知りたい、と心の底から願うようになりました。

答えを求めて、ヒロミさんは手あたり次第に心理学や自己啓発の本に手を伸ばしました。「毒親」という言葉を知ったのもこの頃でした。