子どもを見ると前日の家庭の様子がわかる

近所の保育園を退職した先生が、「園でのお子さんの様子を見れば、前日のご家庭の様子がだいたいわかります」と言っていた。
穏やかに過ごした翌日は落ち着いているし、パパに遊んでもらった夜のことは、翌朝話したがる。家庭に不穏な空気が流れると、保育園で落ち着きを無くしたり、言動が乱暴になったりすることがあるらしい。
だからこそ親は保育園での我が子のふるまいに目を光らせる。周りと比べて落ち込んだり、マウントを取ろうとしたりする。

『赤い隣人~小さな泣き声が聞こえる』(野原広子著/KADOKAWA)は、幼い息子とともに新しい街に引っ越してきた主人公の希(のぞみ)と、その隣人たちを描いたコミックエッセイだ。
隣に住む理想的な家庭の主婦、千夏。賢くしっかりした千夏の娘。親し気に声を掛ける階下のおばさん。希の隣人は一見みな良い人に見える。だが、付き合いが深まるつれて、希の違和感はじわじわと高まっていく。

『赤い隣人~小さな泣き声が聞こえる』(野原 広子著/KADOKAWA)

引っ越しが原因なのか、しばらくなかったおねしょをするようになった希の息子、ケンちゃん。しっかりしているように見えた隣家の千夏の娘、桃花も、同じ失敗をしたことから、希と千夏は親しくなっていく。
が、一見良いひとたちに思えた隣人たちの、ふとした言動にモヤモヤし始める希。
一つ一つの言葉やふるまいは他愛もなくても、積み重なれば気になってくる。それが隣人との関係というものだ。

 

『赤い隣人~小さな泣き声が聞こえる』
※1話目から読む

2021年『消えたママ友』『妻が口をきいてくれません』の2作で第25回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した著者の野原広子さんは、これまでにも『人生最大の失敗』や『ママ友がこわい 子どもが同学年という小さな絶望』などで、家庭や子育てをめぐる人間関係を多く描いてきた。
夫の不用意な一言や、ママ友の言動にザワつく主婦の気持ちを圧倒的なリアリティで描いた作品は多くの共感を呼ぶ。
2月に刊行された『赤い隣人~小さな泣き声が聞こえる』も、「隣に住む“完璧な主婦”がたまに見せる一面が怖すぎる」「隣人って親しさの距離感ムズい。どの家庭にもストレスの事情があって、子供の泣き声があってもどう介入すべきか悩ましい」などとツイッターなどで話題になっている。

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同年代の子を持つ大人同士のお付き合い

子どものクラスやグループによって付き合いが始まるママ友付き合い。難しい距離感の取り方に入園、入学前から頭を悩ませるママさんもいると聞く。著者の野原さんに理想の付き合い方について訊いた。
マンガの試し読みと合わせてお届けする。

「ママ友というのは味方であれば本当に心強い味方です。けれどもほんの少しバランスが崩れただけで、どうしようもない関係になってしまうこともあったりします。
ですから無理はしない。
”ママ友”という枠にとらわれ過ぎず、同年代の子供を育てる大人同士のお付き合いという感覚でいいのではないでしょうか。
ママ友はできたら嬉しい。でも、できないならそれでもいい。これが一番いいような気がします。

子どもの健やかな成長を最優先し、ママはそれに寄り添い見守る係であることを忘れないようにできたらいいですよね。
ママ友を作ろうとか、ママ友とうまくやろうとか無理に思わず、もし『私、無理をしてるかも…』と感じたら、他の世界に目を向けてみるとか。
とにかく無理をしない、でいけたらと思います」