SFにたびたび登場する地底人の暮らす地下世界!
生命は存在しないとされていた海底下の世界に、近年、地上を超える生命圏が存在することがわかってきました。
食べるものもほとんどない、それどころか、呼吸すらもままならない高圧・高温の極限環境に生きる生物とはいったいどのようなものなのでしょうか?
『DEEP LIFE 海底下生命圏』では、この海底地下生命の謎を解明するために行われた「海洋科学掘削」の歴史から、海底下生命圏の謎に迫ります。
それでは、海底下の住人とは、いったい何者で、どんな暮らしをしているのか、その姿を見ていきましょう。
*この記事は、『DEEP LIFE 海底下生命圏』をもとに、再構成してお届けします。本書の詳しい内容は、こちらでご覧になれます。
海底地下には地上を超える“生命圏”が広がる
深い海の底のさらに下、海底下には生命が存在しない化石の世界が広がっていると考えられてきました。しかし、今では、私たちが暮らす地表の世界だけではなく、深海底のさらにその下にも、独自の進化を遂げた生命が暮らしていることがわかっています。
海底下の住人の主役は、たった1個の細胞からなる単細胞の微生物たちです。
微生物たちは、泥の粒と粒の狭い隙間や、岩石の割れ目などに、ひっそりと暮らしています。現在、地球全体の海底下に生息する微生物の数は、290,000,000,000,000,000,000,000,000,000 と推定されています。29の後にゼロが28個も並ぶ、膨大な数です。

数が非常に多いことのたとえとして「星の数ほど」と言いますが、これは宇宙で確認されている恒星の数の1万倍以上の天文学的な数です。海底下には星の数をはるかに超える微生物たちが暮らしているのです。
海底下になぜ生命がいるのか?
私たちが暮らす地表は、太陽の光が降り注いで明るく、生命が生きていくための栄養がたくさんある、開放的な世界です。それに対して海底下は、太陽の光が届かない暗黒の世界。栄養も乏しく、数千年から数千万年といった地質学的な時間をかけて積み重なった堆積物や岩石に囲まれた、高圧のキッツキツの世界です。そのような地表の世界とは全く別の超極限的な環境で暮らす生命とは、いったい何者で、どのように生きているのでしょうか。そして、そんなところで、何をしているのでしょうか。
ここで、海底下の世界を大まかに紹介します。