生命の存在できる温度限界調査「T-リミット」
海底下では、どのくらいの温度になる深さまで、生命圏が広がっているのでしょうか? その限界は、どのような条件によって決まっているのでしょうか?
これらの疑問を解決するため、2016年に地球深部探査船「ちきゅう」を用いた国際深海科学掘削計画(IODP)第370次研究航海「室戸沖限界生命圏掘削調査」、通称「T-リミット」が行われました。

T−リミットでは、高知県室戸岬から約125 kmの沖合、南海トラフの付加体先端部に位置する水深4776 mの海底から深さ1177 mまで掘削し、連続的に地層のサンプルを採取しました。最深部の地層の温度は約120℃です。
そこに生命は存在していたのでしょうか。
「ちきゅう」 で生命圏の限界に挑む!
掘削地点の海底面の温度は1.7℃です。深くなるにつれて温度が上昇し、深さ1,177 mでは120±3℃に達します。これは、現時点において培養可能な微生物の最高生育温度に匹敵する温度です。
「ちきゅう」によって採取されたコアは、すぐに船内のX線CTスキャナーで分析します。次に、外部から汚染されていない部分を特定し、無酸素の嫌気クリーンボックスの中でサンプルを取り分けます。そのサンプルを、掘削地点から約160 km離れた高知県南国市にある高知コアセンターまで、ヘリコプターで運びました。

T-リミットで採取したサンプルは、さまざまな分野の専門家から成る国際チームにより、約4年をかけて詳細な分析研究が行われました。そして2020年12月、米科学誌「サイエンス」にその研究成果が掲載されました。