2023.05.22
患者不在、エリート医師たちの派閥争い…18人死亡、前代未聞の医療事故で信用を地に落とした群馬大学医学部附属病院の「その後」をご存知ですか
群馬大学医学部附属病院で腹腔鏡手術を受けた患者8人が、相次いで死亡していた。
2014年、読売新聞のスクープ記事から、医学界を揺るがす大スキャンダルが明らかになる。亡くなった患者・8人の手術は、いずれも早瀬(仮名)という40代の男性医師が執刀していた。院内調査によって、開腹手術でも10人が死亡していたことが発覚した。
この一連の取材によって新聞協会賞を受けた読売新聞の高梨ゆき子論説委員の著書『大学病院の奈落』は刊行直後から大きな話題を集め、2023年春に文庫化されて再び読者を広げている。一方、「現場」となった群馬大学医学部附属病院は、第三者委員会の提言などを受けて改革への道を歩んでいる。
「その後」の大学病院の変化を見つめる高梨氏の特別レポート。
「白い巨塔」からの脱却
患者不在の医療がまかり通った「白い巨塔」から、患者ファーストを実践する「トップランナー」めざして――。
群馬大学病院は、深刻な医療事故が社会の耳目を集めてから、地道な改革に取り組み、いまでは大きく変貌した。少なくとも、患者を中心とした医療を実践しようと、他の病院以上に努力を重ねている人たちが、確かに存在していると感じる。
変わったところは多々あるだろう。
対立していた第1外科と第2外科の統合は言うに及ばず、新しい手術をするときの倫理手続き、しっかりしたインフォームド・コンセントとカルテの記載などなど、適正化が進んでいるという。なかでも、とりわけ目を引く変化は、入院中の患者のカルテを、本人や家族が自由に見られるようにしたことではないだろうか。

医療の透明化が求められる時代の流れとともに、カルテの開示が義務付けられるようになってから、20年近い歳月が流れている。