女性たちの「エロ話」は何を意味していたのか? 民俗学者・宮本常一が見た、農村の「性」

日本列島を旅し、「庶民の歴史」を聞き集めて、一様ではない「日本」のあり方を追究し続けた民俗学者・宮本常一とは何者だったのか。

民俗学者・畑中章宏氏による新刊『今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる』が話題だ。日本中の人々の姿を見てきた宮本が感じた、「共同体内の搾取」に関する東日本と西日本の違いや性のあり方とはどのようなものだったのか。

※本記事は畑中章宏『今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる』から抜粋・編集したものです。

女性の民俗的地位

歴史学者の網野善彦は、宮本常一が「女性」という主題について民俗学の立場から積極的に取り組んだことを高く評価している。

網野によると、『忘れられた日本人』が刊行された当時(1960年前後)の歴史学、経済史学の主流は、家父長制、男性による女性の支配を封建的な社会の残滓とみなし、それが克服されて日本の社会が民主化される方向に推進していくことが必須な課題だという捉え方をしていた。

宮本はこうした見方を厳しく批判し、それは東日本の常識を基礎として捉えた日本史像、日本社会像で、日本全体の事実に則しているものではないと指摘をしている。男性中心の家父長制によって女性が支配されているというあり方、あるいは地主が小作人を厳しく搾取しているのは東日本の実態で、西日本の実態は違うことを宮本は積極的に主張したというのだ。

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