2023.05.18

フューチャーベンチャーキャピタルの「華麗なる社長」に退任を迫った「雑草経営者」の告白《6・13株主総会までの大バトル》

GS出身、弁護士資格も持つ在日韓国人社長

株主総会シーズンが近付いてきた。アクティビスト(物言う株主)の存在が、「市場の監視役」として認知され、環境団体が上場企業の脱炭素化を監視して異議を突きつける時代である。株主からの「株主提案」が年々、増加しており、今年はどの企業で「会社提案」が否決されるかに注目が集っている。

京都市に本拠を置くフューチャーベンチャーキャピタル(FVC・東証スタンダード)は、独立系ベンチャーキャピタルとして知られているが、名古屋市が本拠の不動産系DSG1から7名の取締役選任を求める「株主提案」を受け、5月8日に反対意見を表明した。それに対してDSG1は、14日に第1回株主説明会を開催しており、6月13日開催予定の定時株主総会へ向けて、これから激しいプロキシーファイト(委任状争奪戦)が展開される。

FVCは時価総額約73億円(5月12日終値)と企業規模は大きくないものの、初期段階の有望企業に資金提供して成長を支援、果実を得るベンチャーキャピタルとして、夢の街創造委員会やファインデックスなどの投資成功例を持っている。

今回の「株主提案」が注目され、「時代を映す株主総会」(証券幹部)と目されているのは、社長の金武偉氏の立ち位置と社長就任の経緯、そして退任要求の理由によるものだ。

金武偉氏(FVC公式YoutTubeより)

金氏の経歴は華麗だ。79年に在日韓国人として京都市に生まれる。「通り名」もなく「キム」と名乗り続けて、韓国人としてのアイデンティティーを育んだ。地元の高校に通ったものの、外交官になりたいという夢を持って米国に留学し、名門のカリフォルニア大学ロサンゼルス校を経て、大手投資銀行ゴールドマン・サックスで金融業務に就く。

 

その後、ボストン大学ロースクールに入り、米弁護士資格を取ってニューヨークの法律事務所に務める。ただ、「カネだけじゃない」という思いから弁護士事務所を辞めると、18年に「社会的課題の解決と財務的利潤の両立」を実現する投資ファンドを設立した。昨年の株主総会で金氏がFVCに「株主提案」したのは、その課題の早期実現のためだったが、わずか2・5%の株しか保有しておらず、「株主提案の時代とはいえ無謀に近い」(証券記者)と目されていた。

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