2023.05.26

政府の「マイナ保険証」ゴリ押しが原因で、これから介護施設で起こる「ヤバすぎる事態」

荻原 博子 プロフィール

9割の介護施設が「管理できない」

全国保険医団体連合会が1219ヵ所の特養・老健施設に行ったアンケートでは、入居者の健康保険証を預かって管理しているという施設が83.6%ありました。こうした施設に、「もし健康保険証が廃止されたら『暗証番号』も含めて『マイナンバーカード』の管理ができるか」と聞いたところ、「管理できない」という回答が94%。健康保険証なら預かれるけれど、「マイナ保険証」と「暗証番号」を預かるのは難しいということです。

しかも、「マイナンバーカード」は、ただ預かるだけでなく更新しなくてはなりません。「マイナンバーカード」の更新は10年ごと、「マイナ保険証」として利用するための更新は5年ごとです。

更新は、基本的には本人が自治体の窓口でしなくてはなりません。病気や、身体の障害その他の「やむを得ない理由」により市役所に出向くことが困難であると認められれば、代理申請での交付が可能です。ただ、その際には、代理である証明書類や、本人が出向くことが困難であることを証明する資料なども提示しなくてはなりません。

 

ひとつの特養あたりの入居者数は50人から100人が最も多く、中には100人以上入居しているという施設もあるので、「マイナンバーカード」の申請や、5年に一度とは言え「マイナ保険証」の更新を代理で行わなければならないのです。

それも、ほとんど自力で判断するのが難しい状態の人の代理ですから、当然家族などが関わらざるを得ません。関係者に連絡を取って許諾をもらうところから始まり、気の遠くなるような作業が必要になるのは、だれが考えてもわかるでしょう。しかし、それを簡略化する具体的な指針は、まだ国から示されていません。

前述の全国保険医団体連合会が各施設に行ったアンケートでも、施設側が「マイナンバーカード」の代理更新ができるか聞いていますが、93.5%の施設が「できない」と答えているのは、当然でしょう。

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