20年以上前から変わらない「少子化」のヤバすぎる実態…「自分を生かすだけで精一杯」な30歳男性、「子育てを一緒にできる男がいない」と嘆く31歳女性
政治家の「手抜き」が生んだ「異次元の少子化」
〈とてつもない勢いの少子化です。1950年には270万人産まれていた赤ちゃんが、99年には117万人と半分以下。国連の試算によれば「日本は今後50年間に3300万人の移民を受け入れるか、定年を77歳まで引き上げないと90年代の生産性が保てない」とか。政府もやっと「税金の支払い者が産まれないと国は倒産する」ことに気がついたようです。〉
これは最近の文ではありません。筆者が月刊誌「新潮45」2000年6月号に寄稿した「産むべきヒトが産まない時代」の巻頭の拙文です。
岸田総理が泡を食って防衛予算倍増に付け加えた「異次元(どこが!?)の少子化対策」とやらがクローズアップされていますが、23年前に国連から警告されても歴代の政権(その当時は森喜朗首相)が「そんなバカなことがあるものか」とスルーか無視してきた結果、「産まない時代」がずっと続いて現代に至ってきました。
現状の「少子化」は政府の人任せや、楽観的見解の積み重ねが主な原因であって、降って湧いた社会現象でも、若い世代の「静かなる反旗」でもありません。棚上げの結果が出る頃にはこの世にいないからと無責任を決め込んだ老害政治家グループの「手抜き」が、まさかこの後23年も続くとは筆者も、大部分の女性たちも思いもよりませんでした。

拙文で取り上げた国連の試算予想ですが、「2050年ごろには移民が3300万人必要」という数値は悲観的すぎたようです。2022年6月の時点で(永住権のある人も含めて)外国人登録者は296万人と、まだ1/10以下。長引く不況と円安を考慮すれば、あと28年で桁違いに急増することはなさそうだし、政府の試算でも700万人程度で頭打ちのようです。
しかし、全国一律「77歳の定年」の方は、年金開始時期を遅らせる法案が見え隠れしていますから、現実味を帯びてきました。実際、2021年の時点では65歳〜80代の年金世代のうち、女性373万人と男性538万人が働いています。内訳はフルタイムの正規労働者が25%、非正規労働者が75%ですが、短時間労働のアルバイトかパートタイム・ワーカーが52.2%。高齢者の半数弱がフルタイムに近い働き方をしています。
元気で動ける期限と言われる健康寿命が男性が72歳で女性が75歳ですから、「倒れるまで挙国一致で働く時代」がすぐそこまで来ていて、ご褒美の余生なんて幻想になるのでしょうか。
90年代より生産力が落ち、高齢者が安い賃金で長時間真面目に働き、なおかつ予想より早くA Iの参入や生活のデジタル化が普及したおかげで、現在の国力はかろうじて保たれていると指摘する識者もいます。日本を引っ張っていこうとする人材は今後どのくらい現れてくれるのかと、暗澹たる気分になるかもしれません。