豊田と大道は浮きから垂れ下がるロープをつかんだまま、救命いかだを目指そうとした。しかし、黒いドロッとした油の波に逆らう格好になって、思うように進めない。風と波に立ち向かうようにして、ロープをつかんだ状態のまま泳がねばならない。
豊田と大道は、なかなか近づくことができなかった。そうしているうちに救命いかだが遠ざかる。
「落ち着こう、落ち着こう」
豊田はそう口にした。
さらに連載記事<漁船に起きた「あり得ない事態」…突然、船員たちを死の際に追いやった「異常な出来事」>では、漁船転覆までの様子を詳細に語る。
本記事の抜粋元『黒い海 船は突然、深海へ消えた』では、2008年に起きた第58寿和丸の転覆事件について、その詳細を語りながら、謎に包まれた「原因」に迫ります。漁船を転覆させたモノの「正体」とは……。ぜひ、お買い求めください。