2023.05.24
「村上春樹」と「サザンオールスターズ」の“意外な共通点”…かつて日本に起きた「巨大な変化」について
時代の雰囲気は、どう切り取られたか?
作家・村上春樹さんの最新長編小説『街とその不確かな壁』が刊行され、大きな話題を呼んでいます。
村上さんといえば、デビュー以来いまに至るまで圧倒的な人気を誇り、その作品の数々は読書界に大きなインパクトを残してきました。
とりわけ1979年に文芸誌「群像」でデビューした当時、デビュー作「風の歌を聴け」が読書人たちに与えた衝撃はきわめて大きかったとされます。また、同作が日本の文学に残した足跡は大きかったと評する専門家は数多くいます。
「風の歌を聴け」が高く評価されるさいにしばしば注目されるのは、同作が、1970年代末から1980年代に起きていた「時代の変化」を鋭く切り取っていた……という点です。
では、「風の歌を聴け」が切り取った「時代の変化」「時代の雰囲気」とはどのようなものだったのか? それを深く理解するためには、文学ではない、ほかのジャンルにおいて、村上さんが描いたのと似たような「時代の雰囲気」を表現した人々について考えるとよいかもしれません。
たとえば、村上さんの作品を長きにわたって批評してきた著名な批評家である加藤典洋さんは、村上さんと「サザンオールスターズ」を並べて議論を展開します。

加藤さんは『村上春樹の世界』という評論集のなかで、「風の歌を聴け」に出てくる、「金持ちなんて・みんな・糞くらえさ。」そして「気分が良くて何が悪い」という言葉を引きながら、以下のように語ります。