2023.05.22

「一緒に地獄行く覚悟あるんか?」…泉房穂前明石市長が明かす「私はなぜ宗教団体の脅しに屈しなかったのか」

発売即3刷のベストセラーとなっている泉房穂氏の最新刊『政治はケンカだ!明石市長の12年』(聞き手=『朝日新聞政治部』の著者で政治ジャーナリストの鮫島浩氏)。大反響の特別無料公開もいよいよ第七回目となり、今回は「宗教・業界団体編」をお届けする。
あらゆる抵抗勢力と闘って「日本一の子育て政策」を実現してきた泉氏だが、宗教団体や各種業界団体は、政治家の選挙と結びついているだけに、ひと際やっかいだったと言う。
では泉氏は、なぜそうした団体に取り込まれずに、信念を貫けたのか。
それは、幼いころから身に付けていた「ケンカの技法」があったからだ。

連載『政治はケンカだ!』第7回前編

あの手この手で近寄ってくる利権集団

鮫島 これまでの泉さんの政治家人生を振り返ってみると、業界団体や宗教団体に対して、一貫して強硬姿勢を貫いています。政治や行政の場には利権団体がうじゃうじゃいるわけで、表ではクリーンなことを言っていても、裏では特定の団体と繋がっている政治家はたくさんいるわけです。旧統一教会問題もしかり。政党が特定の団体と依存関係を築いているケースは山ほどある。
 
泉さんからすると、それらの団体と徹底的に闘うのは当然の判断なのでしょうが、それにしても強い。この強さの秘訣は何なんですか? だって、市長をやってれば、手を替え品を替え近付いてくるでしょ?

 後に引き継ぐ明石市に遺恨は残したくないから、慎重に言葉を選ばないといけませんが、もちろんそういう団体は色んな方法で接触を試みてきます。アメをチラつかせて擦り寄ってきたり。それこそ選挙のたびに「手打ちしてやるから支持者名簿出せ」と言ってきますし、だいぶ古典的な方法で近付いてくる。

でもね、そんな甘い話ありませんわ。結局、こっちが擦り寄ったところで、向こうは味をしめて「もっともっと」と要求するようになるだけです。挙げ句、4年後に違う候補を出されて裏切られる。そんなの目に見えています。

これは、とくに議会で孤立している無党派の市長や知事に言いたいのですけどね。選挙で勝ったなら、これまで戦っていた団体と手打ちしないことです。改革しようと思ったら一定の緊張関係はやむをえない。こちらが妥協しなければ、やがて向こうから歩み寄ってきます。これは悪い意味じゃなく、こちらの力を認めるという感じかな。

私の場合だって、周り全てが敵の状態でしたけど、じーっと耐えてたらいつの間にか寄ってきて、実際、予算が通るようになってますから。結局は、痺れを切らして、向こうは市長に歩み寄るしかなくなる。絶対に、こちらから「ノイジー・マイノリティ」に過ぎない既得権益層や古い勢力に近付いてはいけない。そんなことしたら、向こうに取り込まれるだけ。

せっかく「サイレント・マジョリティ」の応援をもらって市長に選ばれたのに、それでは意味がない。市長は、どれだけ議会で居心地が悪くても、市民の代表者としてドッシリしていればいい。半年ぐらい持ち堪えることができれば、既存の古い勢力も嫌がらせを続けられなくなってくる。だんだん自分たちの立場が危うくなってきますから。

  • 『成熟とともに限りある時を生きる』ドミニック・ローホー
  • 『世界で最初に飢えるのは日本』鈴木宣弘
  • 『志望校選びの参考書』矢野耕平
  • 『魚は数をかぞえられるか』バターワース
  • 『神々の復讐』中山茂大