いま日本はどんな国なのか、私たちはどんな時代を生きているのか。
日本という国や日本人の謎や難題に迫った新書『日本の死角』が話題になっている。
ここでは、「日本人は集団主義」という幻想がなぜ世界的に広まったかについて掘り下げる。
「日本人は集団主義」と言われるが…
「日本人は集団主義」とよく言われるが、じつは薄弱な根拠しかなく、幻想であることを『日本の死角』収録の「『日本人は集団主義』という幻想」では指摘している。
ではどのようにして「日本人は集団主義」説は「常識」として定着したのか。
〈この「常識」の淵源をたどっていくと、パーシヴァル・ローウェルというアメリカ人に行きあたる。ボストンの資産家の息子で、「火星の表面に見える縞模様は、火星人が掘った運河だ」という説を唱え、有名になったアマチュア天文家である。
このローウェルが、明治時代の日本にやってきて、日本をテーマにした『極東の魂』という本を書いた。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)はこの本を読んで感激し、それが日本に来るきっかけになったというから、かなり影響力の強い本だったのだろう。
この『極東の魂』のなかで、ローウェルは「日本人には個性がない」と繰りかえし主張しているのである。〉(『日本の死角』より)
ローウェルは日本に来て日本語を学びはじめてからたった1年ほどでこの本を書いている。
そのため、先入観で日本人を論じている部分も見られる。
「日本人には個性がない」という話も、アメリカと日本が西と東の対極に位置するから対極的な存在である——といったように。