プーチンとそっくり
「現在の戦況は、完全にロシアがウクライナに負けている状態です。そこで、プーチンはプリゴジンに失敗の責任を取らせようとしているのではないでしょうか。まさに『トカゲの尻尾切り』です」
権力を掌握し、恒久的に維持しようとする独裁者は、けっして自分の非を認めようとはしない。それどころか、「どうせ代わりの者などいくらでもいる」と、下の者に責任を被せて追放し、追及から逃れるのが常だ。
プーチンがプリゴジンにそうするように、独裁者が、かつて盟友だった者に罪を被せ、粛清した事例は過去にも存在する。
ナチス・ドイツのアドルフ・ヒトラーが、親友エルンスト・レームを粛清した「長いナイフの夜事件」がそうだ。

レームは、ヒトラーが党首になる前からの数少ない友人であり、互いに「俺」「お前」で呼び合う間柄だったという。そんな彼が率いる軍事組織「突撃隊」は、ナチ党の集会の警備や護衛に加え、反対党の襲撃などの実行部隊を担う、いわばヒトラー子飼いのテロ組織でもあった。
だが、ヒトラーが国のトップに立ち、権力を得ると、徐々に突撃隊が邪魔な存在になっていく。
「突撃隊による過激な暴力活動は、ナチスの暗黒面として批判されている。このままでは自分も糾弾され、権力の座を追われかねない。ならば幕僚長のレームに責任をなすりつけ、一掃すれば、大義名分にもなる。そうとなれば粛清するしかない」
こう考えたであろうヒトラーは、1934年、レーム率いる突撃隊関係者ら1000人以上を処刑。親友をも殺して、トカゲの尻尾切りを完遂したのである。