闇バイトで集められた若者たちによる強盗や特殊詐欺事件が頻発し、社会を不安に陥れている。その残虐で短絡的な犯罪手法は、長らく日本の誇りであった「治安の良さ」までも崩壊させつつあるといってもよいのではないだろうか。

若者が“割の良いバイト感覚”で簡単に犯罪に手を染めるのはなぜなのか。彼らは「闇バイトはコスパよく稼げる」と思い込んでいるが、それが真っ赤な嘘である理由をVTuberのかなえ先生が自身の元少年院法務教官の経験を交えて熱く語ってくれた。

今日明日のお金に困り、犯罪にハマり、周囲を巻き込んでさらなる経済的地獄・人生の破滅に突き進む子どもたちを、親世代の私たちはどうやって救い出すべきか、今こそ真剣に考えるときだ。

元法務教官(少年院の先生で法務省の国家公務員)という異色の経歴を持つ、VTuberの“かなえ先生”
 

家族を巻き込んで地獄に落ちる「おはよう逮捕」

5月8日に発生した銀座の時計店を狙った強盗事件は、実行犯4人は犯行直後に逮捕されたが、3月14日に渋谷区のアクセサリー店で強盗事件が発生している。実行犯少年(19歳)は、アクセサリー店の男性店長を包丁で脅し、現金約350万円やアクセサリー100点以上、4000万円相当を奪って逃走。その場はなんとか逃げおおせたものの、三重の実家に戻ってから事件への関与を家族に相談し、母親に付き添われて警察署に出頭した。

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同世代の息子を持つ私は、このニュースをみたとき、息子が罪を告白したときの親の驚愕と絶望感、そしてわが子を強盗犯として警察に出頭させる母親の心情を思うと、胸が痛くなった。

けれど、かなえ先生は「この少年には、母親に付き添われて出頭できた自分を、幸せなんだと自覚してほしい」と語る。

「罪を犯して少年院に入ってくる子どもの多くは、突然警察官が家に来て警察署に連行されて逮捕されます。警察が来るのはたいてい朝なので通称『おはよう逮捕』と呼ばれます。親に自分の言葉で自分の罪を語ることも、親との話し合いもままならないまま、警察に連れていかれるんです(優しい警察官なら少し話をさせることもあるそうですが)。

今はさすがに親の前では手錠をかけないこともあるようですが、ある朝突然、親にとってみればなにがなんだかわからないまま、わが子が目の前で警察に逮捕される瞬間を見る動揺や困惑、そして絶望感たるやはかり知れません。

もちろん、親がわが子を警察に出頭させる行為も、相当辛いものがあると思います。犯罪はいけないことだと頭では重々わかっていても、それでもわが子をかばいたくなるのは親心というものでしょう。しかし子ども本人から直接、罪を犯したことを告白され、親としての最後の務めとして子どもを警察に連れて行くことができれば、まだ心の整理もつくのではないでしょうか。

親が親として機能していない、親子関係が断絶している、など家庭環境に恵まれない子どもは、親に自分の罪を告白して叱ってもらったり、泣かれたり、正しい道(自首・出頭)を説かれることもなく、いきなり捕まってしまうんです。渋谷の事件の19歳の少年は、親が出頭に付き添ってくれたというまっとうな家庭で育った幸せに感謝し、そんな家庭を悲しみの底に沈ませてしまった自分の行いをしっかり反省して更生してほしいと心から思います」(かなえ先生)

「逮捕されるような事態に陥ったときは、とにかく親に相談するべき」とかなえ先生。そのうえで弁護士に相談し、保護者や弁護士とともに速やかに出頭・自首するのが、万が一罪を犯してしまったときのベストな対処法だという。