「油で真っ黒の遺体」になった仲間たちと帰還…報道陣の前で顔を覆った生存者たち

伊澤理江さんの『黒い海 船は突然、深海へ消えた』が第54回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しました。本記事では、受賞作のなかから一部を特別公開します。

第1回はこちら 

「助かったよお、お母さん」

小名浜港での喧騒が激しくなっていた、6月23日の夕刻。

第58寿和丸の乗組員のうち、救助された豊田と大道、新田の3人はレッコボートから第6寿和丸に乗り移っていた。沈没現場からほぼ一直線に太平洋上を進み、小名浜港に向かう。記録によると、第6寿和丸が現場海域を離れたのは午後5時20分頃。小名浜で記者会見が始まったのとほぼ同じ時刻だった。

第6寿和丸に移った3人は、ようやく助かったことを実感した。

大道は、船上から岩手県野田村の実家に船舶電話を掛けた。受話器を取ったのは母。大道は今にも泣き出しそうな、震える声で「助かったよお、お母さん」と声を絞り出した。

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