破綻した理由は何か
前述したようにAさん夫婦は数年後、任意売却によりこのマンションを手放すことになる。理由は言うまでもなく返済が滞ったからだ。
何が原因であったか。理由は様々にあるが結局のところ無理をしすぎたのだ。
住宅を購入される方は少なからず無理をされる。
逆説的に言えば多少の無理をしなければ購入できないのが不動産だ。だがそれも程度の問題である。無理のしすぎは破綻をまねくからだ。
「借り入れできる=支払える」という単純なものではないからだ。
Aさんの場合、まず営業マンの言いなりで住宅ローンを3年間固定金利で申し込んだことにある。

3年間固定金利は、金融機関が目先の金利を低く設定し顧客を募集するための手段である。この特約期間中ほとんどの金融機関は逆ザヤとなり赤字なのだ。利益は特約期間終了以降に回収する。もっともそのようなロジックは誰でも気がつくので、特約期間終了後は店頭基準金利から数%マイナスという優遇を設けているが、いずれにしても当初の支払い金額よりは増加する。
さらに登記費用や不動産収得税など、ローン以外に必要な経費や毎年の固定資産税、月々の管理費や修繕積立金・駐車場代などについての理解も不足していた。
つまり住宅ローンの支払金額だけに目がいき、それ以外に必要な経費にまで考えが及んでいなかったのだ。