2023.05.24
# アメリカ

アメリカの「デフォルト危機」はなぜ起きるのか? その思想の先に見えた「日本へのリスク」

米国政府の債務上限問題が正念場を迎えている。米国では債務の上限が法律で決められており、これを引き上げるには都度、議会の承認を得る必要がある。米国は100年以上もこの面倒な手続きを続けているのだが、世論が政府の借金に対してここまで厳しいのは、米国社会には強固な保守思想が根付いているからである。

異様なまでの政府債務に対する厳しさ

毎年の予算において債務に何らかの制限を加えている国は多いが、米国のように債務の絶対額を法律で定め、議会の承認を経て上限を変更しない限り、それ以上の国債発行ができないという厳しい条件を課す国は珍しい。

バイデン大統領〔PHOTO〕Gettyimages
 

この法律が制定されたのは、第一次世界大戦中の1917年であり、何と100年以上も前である。一般的に経済というのは時間の経過とともに成長するので、政府の予算規模や債務額も増大するのが普通である。絶対値として上限を決めてしまうと、経済成長に合わせて都度、上限を引き上げる必要が出てくるので非常に面倒なことになる。ところが米国では100回近くこうした手続きを繰り返し、債務の上限を定めてきた。

当たり前のことだが、こうした法律が存在すると、野党による政治的駆け引きの材料に使われてしまう。今回のように与野党が妥協できずにいると、デフォルト(債務不履行)のリスクまで負うことになる。

もし日本で同じような法律が存在し、国債を発行しようとする政府与党に対して、野党が妨害するという行為を繰り返していたら、野党に対しては凄まじいまでの批判が寄せられるに違いない。ところが米国では、毎年のようにこうした政治的駆け引きが行われており、国民もそれを受け入れている(さすがに今回だけはやり過ぎという批判が出ているが……)。日本では到底、考えられない光景といってよいだろう。

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