「アジアの皇帝」の意地で
中国が5月18日~19日、中央アジア5ヵ国の大統領たちを、13王朝の古都・西安に集めて、「第1回中国・中央アジアサミット」を開いた。まさに、習近平主席の「壮大な皇帝ごっこ」だった。

先週のこのコラムで詳述したように、この「もう一つのサミット」の日程は、岸田文雄首相が議長を務めて19日~21日に開いた広島G7サミットに、あえてぶつけたものだ。しかも、一日早く始めたところに、「アジアの皇帝」たらんとする習近平主席の意地が垣間見られる。
広島G7サミットに関しては、中国ではすごいことになっている。中国メディアは連日、いかに多くの日本人と世界の人々が反対していて、アジアの平和と安定を乱す、はた迷惑でお粗末な大会かということを、これでもかというほど報じ続けたからだ。
例えばCCTV(中国中央広播電子総台)は、「前代未聞の意義深いサミット」(中国・中央アジアサミット)と、「危険で愚かなサミット」(広島G7サミット)とを、常に比較して放映した。広島で反対デモを行っている日本の左翼の方々は、連日インタビューを受け、中国ではすっかり有名人だ。
中国共産党中央委員会機関紙『人民日報』は、9人もの記者が広島G7サミットを担当し、大々的な「アラ探し報道」を続けた。デモのために広島入りした韓国や欧米の左翼人士にまで、批判的な話を聞いている。
『人民日報』の弟分で、中国を代表する国際紙『環球時報』に至っては、5月19日に、そら恐ろしい社説を掲載した。タイトルは、「西安は多方面の清流を注入し、広島はかえって政治的な汚染を排出した」。
同紙はこの2年、「福島原発の汚染水が太平洋に排出されるのを許すな」という記事を出し続けているが、「福島の汚染水」の延長線上に、「広島の政治的汚染」があるというわけだ。本コラムの末尾に、この社説の全訳を載せたので、参照してほしい。