実業家・美容家として“美”と向き合い続け、現在もアラ還には見えない異次元の若々しさを放っている君島十和子。世の女性から「奇跡の56 歳」と称賛されるのは、その輝きがあまりにもナチュラルで、無理して頑張っている感じが伝わってこないからだ。もしや不老不死のアバターなのでは……と疑いたくもなるが、近年は本人がインスタライブなどで“すっぴん”を披露しながらラフなトークを繰り広げる機会が増え、生身の人間であることが判明している。
新刊の『アラ還十和子』では、年齢を重ねれば誰でも訪れるエイジングサインや更年期と向き合ってきたことも語られている。見習いたいのは、ちょっと老いを実感したくらいではヘコまないタフなメンタル。若い頃から激動の人生を歩んできたことで培われた、強く、美しく生きるためのマインドセットに迫る。
進化を望むなら、立ち止まってはいけない
窓から差し込む日差しを浴びながら、微笑みを浮かべて撮影に応じてくれる。君島十和子はアバターではないし、どうやら吸血鬼でもない。分かっていたけれど、驚異的な若々しさは地道な努力の賜物。彼女のように昔から変わらない魅力を保っているように見える人ほど、実際は昔の自分に固執していなくて、細かな美意識のアップデートを繰り返しているものだ。
「20代や30代の頃は、髪型にもファッションにも自分のこだわりを持つ女性に憧れていたんです。でも、例えば好きなブランドや好きな色で固めてしまうと、だんだん他の選択肢が目に入らなくなってくる。『自分らしさをキープしたい』という気持ちが、自分の進化を妨げているのではないかと。少なくとも美容を発信する仕事をしているなら、立ち止まっていてはいけないなと。40代前半でそれに気づいてからは、『こだわりを持たないこと』にこだわって、どんどん新しいメイクやファッションを試すようになりました」

いつまでも「現状維持(何も変えない)」を選んでいると思考停止に陥り、少しずつ老化が始まっていく。それは仕事にも美容にも通じることだ。
「とにかくチャレンジの毎日です。スキンケアであれば自社(FTC)だけでなく他社の製品も試しますし、メイクも次々とトレンドが移り変わるので、アンテナが鈍っていたら良いものを発信できなくなってしまいます。私の年齢になると放っておくとどんどん感度が衰える気もするので、なおさら意識して推進力を高めていく必要があります。もし私のことを『若く見える』と言っていただけるなら、そういうアグレッシブなスタンスに理由があるのかなと(笑)」
7年ぶりの書籍となる『アラ還十和子』には、日々の美容ルーティンや愛用コスメはもちろん、仕事の信念や母親としてのポリシーも語られている。年齢を重ねれば誰もが直面するような悩みと戦ってきた軌跡も明かされており、どこか遠い存在である“美のカリスマ”を身近に感じることに価値がある。
例えば更年期について。お手本のような丁寧なライフスタイルを送り、老化とは無縁に見える君島十和子にも、「もしかして……」と動揺する時期があった。
「私の場合、最初に感じた症状は動悸でした。当時は娘の初舞台が間近に迫っていましたし、会社の代表としても売り上げという結果を出さなければいけない日々だったので、胸がドキドキするのは当たり前だと思っていたんです。でも、なかなか動悸が落ち着かないので循環器内科で検査をしてみたら、何も問題がなくて。その場で先生から婦人科に行くことを勧められて、更年期の症状である可能性を自覚しました」