2023.05.25

猿之助事件は「LGBT法案に影響を与えかねない」と岸田官邸が考えている理由《ジャニー喜多川事件との接点》

女性セブンの詳細な告発記事

市川猿之助の一家心中は、「死んで生まれ変わろう」と、父母と3人で語り合ったという詳細が警視庁によって明かされる。今後、場合によっては猿之助が自殺幇助罪、保護責任者遺棄罪などの罪に問われる。

「密室の犯罪」に加え、後述するように「LGBT理解増進法案に影響を与えたくない」という官邸の思惑もあって、警視庁はメディアが騒ぐのを嫌い、情報を漏洩させずに慎重に捜査を進めている。

一家心中の衝撃に目を奪われがちだが、事件が「梨園」で進行していた恒常化する猿之助のパワハラ・セクハラを批判する報道をきっかけに発生したものであることを忘れてはならない。

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スクープしたのは『女性セブン』(小学館発行)で、猿之助一門の澤瀉屋関係者や劇場関係者が、リーダー猿之助の傍若無人ぶりを語っていた。絶対的な力を背景に、キスなどのスキンシップを弟子筋、共演者、スタッフなどに求め、拒絶されれば相手を「干す」などの挙に出ていたという。

 

積み重ねられた証言は詳細で反論の余地はないものと思われたが、「これ週刊誌が命を奪ったようなものだよ…これだからマスゴミは…」といった書き込みが続いた。

セブンは記事中、猿之助が性的指向を自分から名乗るカミングアウトをしていない人なので、アウティング(了解を得ない暴露)をしていない。それは2022年4月に完全施行したパワハラ防止法に則った措置である。従って、「美しくもやんちゃな歌舞伎者の世界だから」では済まされない事態を、気を配りながら追った告発記事となっている。

LGBT法案と猿之助事件の関係

現在、性的環境は2つの法整備のなか、多様性を認め、差別をなくそうとしている。

ひとつはL(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)といった性的少数者に対する差別環境を改めようというもので、そのためにまずLGBT理解増進法案を成立させようとしている。

日本の取り組みがG7サミット(主要先進国7ヵ国会議)の他の諸国より遅いとして、岸田文雄政権は与党案のまとめを急ぎ、広島サミット前に提出した。猿之助の一家心中は、その直前の5月18日に発生した。「官邸の思惑」とはそうした経緯のなかで生まれ、警視庁上層部に伝えられた。

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