2023.05.26

勝手に購入した100億円の債券を「1日で売却しろ」…追い込まれた証券マンが出した「過去1番」の損失

若き証券ディーラー「ぼく」の視点で語られる、証券会社の一つの日常「100億円のカードゲーム」を紹介する。

(この話は証券マンだった自身の体験談に基づいて作成されています)

(監修/町田哲也

【前編】『「100億」の債券を上司に勝手に購入した証券マンが絶望…「ルール違反」に怒った部長が言い渡した「衝撃」の一言』で見た通り、マーケットで有名な大口投資家が、不動産会社の100億もの社債を売却してきた。数億円から数十億円規模の取引が多い社債市場においては、あまり見ない規模の取引だったものの、「買い」と判断した「ぼく」はそれを買い取ることにした。しかし、事前報告をしなかったことで上司の反感を買い、その債券をその日中に売却しなければならなくなってしまった。

他の証券会社に探りを入れる

ぼくがまず探ったのは、ほかの証券会社のディーラーだった。普段から連絡を取り合う証券会社がいくつかあって、一番仲良くしていたのがある財閥系証券だった。

「聞きましたよ。100億全額買い取ったらしいじゃないですか?」
「買い手が見えてたんでね」
「すごいですね。あんなに高い値段で買うんですか? 私もその買い手に売りたいくらいですよ」

すでに相手は警戒していた。ぼくは自分の動きをさぐられないように、ごまかして電話を切った。思わずため息をついたのは、大きな損失が免れそうにないと認識させられたからだ。

社債は通常、100円で満期を迎えるものを1銭単位で取引する。財閥系証券が売りたいほど高いということは、買い値はぼくの買取価格より1円ほど下だろうか。つまり1億円あたり100万円の損失で、100億円売れば一瞬にして1億円の損失になる。

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ぼくはべつの外資系証券に電話した。普段あまり話すことは多くないが、100億円の取引を知らない可能性に賭けてみることにした。

「ちょっと間違っちゃって、ある不動産会社の社債を多く取りすぎちゃったんですよ。興味ありますか?」

今度は、売却しなければならない事情を素直に伝えることにした。

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