2023.10.04

最近「タクシーが全然捕まらない」ことが暗示する、ヤバい日本経済の実態…岸田首相は「人手不足」の理由に気づいているのか?

加谷 珪一 プロフィール

需給ギャップは短期の結果のみで判断すべきものではないものの、長く続いたマイナスがプラス転換した意味は大きく、日本経済の質的な転換が進んでいる証左の一つと言えるだろう。岸田氏はこれをポジティブに捉え、持続的な成長の芽が出ていると表現したわけだが、これは楽観に過ぎる。

 

日本はスタグフレーションに

コロナ危機が発生した当初、多くの専門家が、日本は恐慌に近い状況となり、激しいデフレと供給過剰が発生すると予測していた。

だが筆者は、出演したテレビ番組や執筆した記事などにおいて、「現実はその逆であり、一定の期間を置いて激しいインフレと供給制限が発生し、日本経済はスタグフレーションに陥る可能性が高い」と繰り返し主張してきた。

筆者の指摘に対しては「そんなことはあり得ない」など多くの批判が寄せられ、筆者と同じ見立てをする専門家も当時はごく少数だったが、現実は筆者の見立て通りに進んでいる。

日本経済はこれまでにないインフレに直面しているものの、賃金は物価上昇に追い付いていない。モノやサービスの供給もままならない状況であり、日本はまさに不景気とインフレが同時に起こるスタグフレーションとなりつつある。

では、なぜ日本経済はこうした事態に陥っているのだろうか。これには複数の要因が複雑に絡み合っているのだが、最も大きいのは(企業収益の低迷を背景とした)低賃金の慢性化と、それに伴う労働力人口のシフトである。

よく知られているように、日本の賃金は諸外国と比較して低く推移している。低賃金による家計の収入不足を補うため、多くの高齢者が就労を続け、これが経済全体の供給を支えてきた。

本当は働きたくないのだが、やむを得ず高齢者が働くことで、何とか企業のオペレーションが維持されており(ちなみに日本の高齢者の就業率は、諸外国と比べると突出して高い)、高齢者が低賃金で働いてくれるので、企業にとっては、経営を改革して賃金を上げる努力を放棄できたとも言える。

ところが、こうした状況を一変させたのがコロナ危機である。

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