2011.08.09
# 雑誌

妙な「産地名」表示が急増中
「太平洋産鮮魚」って、
いったいどこで取れたのか

風評隠し? 放射能隠し?

 都内のJRの駅に隣接した、とあるスーパー。野菜は見たところ、すべてのものに生産県名が記されている。ただし、福島県産はなし。偶然目に付いた袋入りのフキの水煮を手に取って、裏の生産地を見てみると「原料原産地名 国産」と書いてある。これでは何もわからない。その下には製造者として福島県内企業の名前が・・・。

 次は精肉コーナー。福島県産の牛肉は出荷停止だから、店頭に並んでいないのは当然として、ここもほとんど「国産」表示ばかり。薩摩地鶏とか飛騨牛とかブランド肉には、堂々と産地表示があるのに。牛肉は個体識別番号があるから、いざとなれば生まれた場所はわかる。でも、鶏と豚は見当もつかない。

 そして、驚いたのがお刺身のコーナー。銚子産カツオ、北海道産タコなどと並んで「太平洋産カツオたたき」と「太平洋産びん長まぐろ」って。こんなの初めて見た気がする。値引きシールを貼りに来た鮮魚コーナーの担当者に聞いた。

「太平洋産? 前からあるにはあるんだけど、あんまり見なかったなぁ。どこで取れたかはこっちもわからないのよ。カツオやマグロは太平洋の沖合を移動しながら取るから、『太平洋産です』と仲買業者が持ってきたら、それで終わり。法律で、売るほうには産地表示をきっちりするよう決まっているけど、取ってくるほうはアバウトでも許される。おかしいよね。業者だってバカじゃないから、もし福島の沖合で取ったって『福島産です』なんて言うわけない」

 こちらが驚くほどの率直さで語ったこの店員、「気になるならこっちを買ってくださいよ」と、銚子産カツオを指さした。

気仙沼初ガツオはいわき沖産

 後日、別の店の精肉担当者にも聞いたら、小間切れ肉や合い挽き肉などは、複数の産地のものを混ぜ合わせることが多いので、産地は「国産」としか書けないとのこと。ところが、有名デパートを複数廻ると、こちらでは「太平洋産」はもちろん、肉の「国産」表示もほとんど見かけない。合い挽き肉でも、牛はニュージーランド、豚は鹿児島などと表示している。

 原発事故以降、福島県産食品は種類を問わず不人気。そこでスーパーやデパートなどは、妙な「産地名」表示で「ごまかして売ってしまえ」派と「以前より細かく表示して買ってもらおう」派に二極化しているようだ。でも、「太平洋産」や「国産」という表示は、風評隠しや放射能隠しではないか。

 もちろん、スーパーやデパートに流通している以上、福島産の食品であっても、放射線量調査を受けて基準値をクリアしている。ただし、基準値そのものに不信感をもっている消費者は多く、検査もごくわずかのサンプル検査だから、セシウム汚染牛が店頭に並ぶことにもなった。

 たとえば魚。水産庁の7月20日の発表では、福島県いわき市久之浜沖で採取したアイナメから基準値の6倍となるセシウムが検出されているし、海底に棲むため放射性物質が溜まりやすいとされるヒラメやカレイからも、基準値以下ではあるもののセシウムが当然のように検出されている。

 福島県漁業協同組合連合会に聞いた。

「いま現在、福島の漁港に魚は揚がっていません。船も基本的には出ておらず、例外は遠洋と巻き網だけ。遠洋のマグロ船は外国まで行くし、もともと福島県内には水揚げしません。いまがシーズンのカツオは巻き網漁業の主力ですが、こちらは他県の港で揚げられます。確かに巻き網漁船は福島県の沖合も通っていますが、カツオはかなり沖のほうで取りますから。放射能汚染の問題は、港が復旧し、近海の魚が揚がってきてからだと考えています」

 とは言うものの、実際にはいわき市の小名浜港で6月21日に水揚げを予定していた初ガツオは、風評被害を懸念して銚子港に水揚げされている。また、宮城県気仙沼港に水揚げされた初ガツオは、福島県いわき市沖で取ったものだった。魚の生産地表示は、水揚げした漁港のものになるから、これらのカツオは気仙沼産として出回るか、または「太平洋産」としてすでに出回っているのである。

 先の水産庁の発表によると、セシウムが検出されたカツオも当然あるものの、まだ数値は低い。だが、魚の汚染は小型魚から中型魚、そしてカツオやマグロのような大型魚へと生態濃縮が進むので、むしろこれからが心配である。

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