だが、菊池医師はこう指摘する。
「一時期、環境ホルモンとアトピーの関連が言われたことがあります。しかし、最近ではほかにさまざまな原因が考えられています。
アトピーは免疫異常であるアレルギーが根底にあるわけですが、もともと肌が弱かったり、不適切なスキンケアをして、皮膚バリア機能の低下という因子がさらにプラスされることで発症するというのが、最近の皮膚科専門医の一致した見解になっています」
では、免疫に異常をもたらす要因とは何か? 体内に大量の化学物質が入ってしまうことも理由の一つだが、それだけではない。
「外食などで高タンパク、高脂肪の食生活を続けていると、乳酸菌などの腸内細菌にも悪影響をおよぼします。結果として腸内の悪玉菌が増殖し、アレルギーを起こしやすくしてしまうことが分かってきました。
また、ストレスは大人も子どもも同様に、免疫異常を引き起こし、アレルギーを起こしやすくします。
ほかにも、ウィルス性の風邪に対して抗生物質を処方することがいまだに多い。しかし特に小児期での抗生物質の投与は、腸内の乳酸菌や生まれながらに持っている自然免疫の発達を妨げることにつながる可能性があります」(菊池医師)
たとえアレルギーの状態になっても、丁寧にスキンケアし、バリア機能が十分であれば、アトピーの発症を抑えることできる。ただし、清潔を気にしすぎるのも厳禁のようだ。『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』の著者で、科学ジャーナリストの松永和紀氏はこう話す。
「アトピーの増加の原因の一つとして、生活環境が過度に衛生的になったためとする仮説が挙げられています。乳幼児期にウイルスや細菌などに感染する機会が減ったため、免疫力も落ちたというのは、多くの論文で実証されています。
アレルギー疾患はほかにも、スギ花粉の増加や住居の密閉性が高くなりダニが繁殖しやすくなっていることなど、複合的な要因で増えたと考える医療関係者が大半です。単一の化学物質が原因とは考えにくいのです」
目に見えない化学物質に過剰に怯えることなく、食生活の改善など、できることを心がけるのが健康被害を減らすことにつながる。