正確な予測は不可能と言われていた地震予知の世界。ただ「めちゃくちゃ当たる」と企業・官公庁でひそかに話題の地震解析業者は、「東日本大震災の〝予兆〟もつかんでいた」と言い切る。
どうしてこんなに当たるのか
「まるで〝あの時〟の記憶がフラッシュバックしたかのようでしたよ。揺れがおさまるとすぐに工場を出て、同僚と一緒に高台の避難所を目指しました。また大津波が来るんじゃないかって、そればかり考えていました」(宮城県の水産加工工場で働く男性)
8月19日の午後2時36分。福島県、宮城県を東日本大震災の余震とみられる「強い揺れ」が襲った。福島県の浜通り周辺では震度5弱を計測。気象庁は福島県、宮城県の沿岸部に津波注意報を発令し、被災地は緊張に包まれた。「3・11」の記憶が被災地を再び恐怖に陥れた。
実はこの地震を事前に予測し、約1週間前に警告を発していた民間企業がある。地震予測システム「地震解析ラボ」を運営する「インフォメーションシステムズ」(東京都港区)。同社は8月11日にこんな地震予測情報を会員に配信している。
〈2011年8月17日を中心とした14日~21日の間に、東北地方に少なからず被害が発生する地震が(発生すると)予測される。内陸部が震源の場合はマグニチュード5.5以上、海域が震源の場合はマグニチュード6.0以上。震源の深さは30km未満〉
実際に19日に気象庁が発表した地震の詳細は、予測と寸分違わぬこんなものだった。
「震源の深さは約20km、地震の規模を示すマグニチュードは6.8と推定される」
いま地震解析ラボが配信する「地震予測情報」が注目を集めている。8月19日の福島沖地震以外にも、日本各地で起こる地震を次々と予測、見事に的中させているからだ。
記憶に新しいのは8月1日午後11時58分に発生した駿河湾地震。
関東地方でも揺れを観測したこの地震規模はM6.1。静岡市駿河区や焼津市などで震度5弱を観測し、13人が重軽傷を負い、建物27棟が一部損壊するなどの被害を出した。
この地震を地震解析ラボは発生1週間前に予測、「静岡県の沿岸地域で、被害が予想される地震が予測される。地震の規模はM5前後」と警告を発していた。
7月23日にM6.5、最大震度5強を記録した宮城県沖地震についても約2週間前に「岩手県、宮城県方面にM5.5以上の地震」と警告。
さらに7月25日に福島県沖で発生したM6.2(最大震度5弱)の地震も、同じく約2週間前に「福島県、宮城県南部にM5.5以上の地震」と発生を予測していた。
それだけではない。
昨年の実績を見ても、秋田県沖地震(8月31日発生、M5.2)、三陸沖地震(8月10日発生、M6.2)、千葉県北東部地震(7月23日発生、M5.3)、岩手県沖地震(7月5日発生、M6.3)、北海道東方沖地震(6月5日発生、M5.4)などの発生時期、地域、規模を次々と予測、的中させている。
同社社長の平井道夫氏が言う。
「我々が情報提供を始めたのは昨年5月以降。M5以上の地震予測を発表してきましたが、その的中率は60%を超えています」
それにしてもどうしてこんなに当たるのか。それには地震解析ラボで所長を務める電気通信大学名誉教授(電磁理工学専門)の早川正士氏の功績が大きい。
ラボでは早川氏が開発した「地震計測システム」を用いて、およそ1週間から2週間後に起こる地震を事前に解析、予測情報として提供しているからだ。