クラウド・ディバイス---日本の選択4
クラウド設計で、新たな物づくりを

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前回はクラウド・ディバイスを分類し、グーグルのクラウド戦略では「M2M(マシーン・ツー・マシーン)分野に参入する気配がない」と分析した。では、クラウド・ディバイスの重要な部分を占めるM2Mで、日本は主導権を握ぎれるのだろうか。今回は、この点について考察してみたい。
マシーン・ツー・マシーン通信とは
そもそも、M2M通信を使ったクラウド・ディバイスとは、どのようなものだろうか。まず、M2Mの事例を紹介してみよう。
たとえば、Telular社の提供するTankLink(旧SupplyNetCommunications)はM2Mを使った液体タンクのモニター・サービスだ。これは野外に設置した給油用燃料タンクなど、産業タンクの残量を定期的にリモート・チェックして、効率的な補給や液漏れの早期発見などをおこなう。
各タンクに設置するセンサーには携帯データ用のモデムがついており、データをTankLink社のサーバーに送る。ユーザーは同社のウェブで自由に残量をチェックできる。
こうしたタイプのM2Mを『センサー/モニタリング・ネットワーク』と呼ぶ。電気・ガスの遠隔検針やATM(現金自動預払機)モニターなど、広い分野で利用されている。従来DSLや光ファイバーなどの有線網を使っていたが、設置工事やメンテナンスが容易なことからセンサー・ネットワークは無線データ網への移行が進んでいる。
一方、流通管理や資材管理に利用される『アセット・トラッキング』も重要なM2Mアプリケーションだ。米国では、国防総省が軍の補給システムの一環としてアセット・トラッキングを多用している。これはGPS機能を付けた無線モデムを搬送用コンテナに付けて物流を管理するシステムで、RFID(無線識別タグ)などと併用することで、物資の細かい配送管理をおこなう。
イラン・イラク戦争で、毎朝フレッシュなミルクを戦地の兵士に提供できたのは、このトラッキング・システムのおかげだと言われている。ここまで高度なシステムではないが、大手流通業者の間ではアセット・トラッキングが広く利用されている。
従来、センサー・ネットワークやアセット・トラッキングは産業用途(B2B)に限られてきた。これは携帯モデムや通信料が高価なためだ。
たとえば、 FEMA(米連邦緊急事態管理庁)が使っているM2Mモデムは1台700ドル前後。また、遠隔検針などのモニタリング・サービスは、1件当たり月額30ドル前後と割高だ。ちなみに、携帯電話会社に支払われる回線使用料は、この内の2ドルから6ドル程度(*1) だが、いずれにせよ産業用の大口ユーザーでなければ、コストが見合わない。一般の携帯電話料金に比べると、従来のM2Mはコストが遙かに高いことがわかる。