池田信夫×岩瀬大輔×高橋洋一×長谷川幸洋×山崎元「政治も官僚もダメでも自分の力で生き残るために」
徹底討論「2011年 どうなる日本経済」最終回
vol.3 はこちらをご覧ください。
長谷川: 2010年はメディアにとって大きな節目の年だったと思います。2011年は、この変化がはっきりしてくるでしょう。
岩瀬: そうですね。1年前だと、ネットの話題はネットのなかで終わっていました。YouTubeでどんなに話題になっても、そこからテレビに行くということはほとんどなかった。テレビの話題がネットをにぎわせていました。それが逆転しました。ついに何かが変わり始めたのではないでしょうか。
ただ、その一方で多くの人は意外とネット使ってないのかなという感覚もあります。特に地方に行くとそう。ニコニコ動画を見てる人も、実はまだまだニッチなセグメントでしょう。やっぱり多くの人にとって情報源はまだテレビなのかなと。ネットを使ったビジネスをやっていると実感するのは、テレビはちょっと出るだけですごく流入があるんですよ。
池田: 今、この座談会のUstreamどれくらい観てます?
---1000くらいです。
高橋: 少ないな。それが10万くらいになると違うよね。
池田: テレビは何もしなくても1000万ですからね。
高橋: この5人はみんなネットで書いてるでしょ。
山崎: 僕はネットの原稿の方が多い。
高橋: 最近は雑誌や本より、ネットの原稿の方が多くなったよね。
池田: すでに雑誌を抜いてると思うんですよ。僕のブログが月間150万ページビューぐらいで、アゴラというのを合わせると300万ページビューぐらいある。300万ページビューといったら、週刊誌くらいはありますよ。数でいえば、ちょっとした雑誌は抜いている。
長谷川: 僕もそうですが、マスコミで働いている人間が、実はそれを一番、感じています。みんなネットの方に本当の話があるんじゃないかと気が付き始めているんです。
高橋: いいことだね。
長谷川: 僕は個人的にいうと、これはまずいと(笑)
高橋: いや、いいことですよ、日本にとって。
池上彰の可能性と限界
岩瀬: 僕が今日(2010年の大晦日)、感心したのは、テレ朝が池上彰さんのニュース解説を6時間やっていることなんです。格闘技や紅白の裏番組で、医療制度だとか年金の問題をやっている。これは結構画期的というか、すばらしいなあと思いました。
高橋: でもあの解説ってね、役所の情報、そのまんまだよ。新聞読んでない人に新聞を読むのはいいかもしれないけど。
岩瀬: そうはいっても、これまでは格闘技見るか、紅白を見るかっという選択しかなかったんですから、それよりはましじゃないですか。
池田: 僕も池上さんと仕事したことあるけど、あれを見て思ったのは、テレ朝も予算ないんだなってことです(笑)。ほとんどスタジオでしょ。全然、カネかかってないもの。捨ててるんですよ。
高橋: 情報としてはつまんないよ。既存のものをうまくしゃべるかってことだけだから。まったくつまんないね。
長谷川: 高橋さんにとってはつまんないかもしれないけど、世の中の人にとってはよく整理整頓されてるんだよ。ああいう整理整頓されているパッケージというのが、なかなか新聞も提供できてないし、雑誌もできてない。それがたまたま池上さんの本とか番組を見ると、テーマが論点整理されている。
役所流といえばそういう部分もあるけど、こういった論点整理について、普通の人たちがかなりのニーズを持っていることは確かですよ。

池田: NHKって1億3000万人に理解してもらわなきゃいけないっていう建前がある。池上さんもNHKで20年、30年やってたからああいう喋り方しかできなくなるんですよ。
ギリシャとかアイルランドの財政赤字なんていうときは「そもそも財政赤字とは財政支出と収入の差で」からやらないとNHKが成り立たない。逆に言うと、何千万の視聴者、圧倒的多数は賢くない、と見ているわけですよ。財政赤字って何のことかって思う人が半分以上いると思ってやるわけですね。
言葉は悪いけど、マスコミって、読者をバカにすればするほど儲かる。
エロ雑誌なんて売れるでしょ。売れるんだけど、まともな出版社はプライドがあるからそればっかりはやらない。民法のワイドショーだって、みんな観るんだけど、NHKはプライドがあるからやらなかった。でも最近はNHKが8時15分から『あさイチ』という番組をやっていて、こないだTBSの金平さんがアメリカから帰ってきて、それを見て愕然としたと言うんです。朝からNHKがセックスレスの番組をやっているのかと(笑)。
プライド捨てたらなんでもできる。要するに、マスコミってプライドとカネとのバランスでやってるところがあるね。プライド捨てたら儲かる。逆にいうと、ネットメディアに優位性があるのは、言葉は悪いけれど程度の悪い大衆に迎合しなくてもいいというところにメリットがあると思う。

岩瀬: プロの方の見立てはいろいろあると思うんですけど、興味なかった人がその番組をたまたま見ていて知識をかさ上げすることはいいんではないでしょうか。
選挙のときにも、投票に行ったときによくわからないまま流さないようになるかもしれません。そういう意味では良い試みだったのかなと思います。
では最後に、明るい2011年にするために、どんな年になりそうかとか、どう生きていけばとか、前向きな話をお願いします。
池田: 岩瀬さん、まとめようとしてるよね(笑)。僕ね、田原総一朗さんと何回かやっていて、あの人すごいなと思うのは、まとめようとしないんだよね。あれが面白いんですよ。
長谷川: いきなり田原さんと比べるのは、大学野球とメジャーリーガーを比べるようなもんでかわいそうですよ(笑)