2010.03.03

生命保険だって無料の時代がやってくる

著書を無料公開した「日本版フリー」の衝撃 (後編)
現代ビジネス

 あまりそっちへ走ると、顧客がニュースに求めているものと一致しなくなるのではないでしょうか。今、視聴者は、お金と時間をかけてコンテンツを作るNHKを見直しているとも聞きます。新聞社としては、どうやってネットでのアテンションを獲得していくのがいいでしょうか。

坪田 第三者に、ニュースを評価してもらえばいいと思います。ニュースを評価してくれる人たちを募って「この記事はよく書けていた」「これは取材不足」というような、評価記事を書いてもらうのです。もちろん、原稿料を支払います。大事なのは、それをするのが第三者だということです。

 だいぶ昔の話になりますが、パソコンの購入で迷ったことがあります。NECのPC-9800シリーズと、富士通のFM-8シリーズとです。どちらも16ビットパソコンなので、80年代前半の話です。仕様だけを比べると、FM-8の方が良かった。でも、そのパソコンで動くソフトを作る第三者、サードパーティが多かったのは、PC-9800でした。だから私はそちらを買いましたし、市場もNECが席巻しました。

「サードパーティ」を育てる。これが大切なのは、有料だけでなく、フリーの世界でも同じです。お金は払いますが、第三者という中立な評価者に盛り上げてもらうことで、一緒に育っていくのです。

 かつてソニーの製品には、発売されたらすぐに買って盛り上げる顧客が3000人はいると言われていました。こういったコアユーザーを大事にしていかないと、育つものも育ちません。

岩瀬 新聞のフリー化についてひとつ伺いたいことがあります。欧米の新聞と日本の新聞を比べると、欧米の新聞は、掲載される記事の本数が少ない代わりに長いものが多い。逆に日本の新聞は、短い記事の数が多い。ウェブで公開するとなると、紙面の制約がないぶん、読み応えのある長いものを求める読者も多いと思います。短いままでは、読まれないのではないでしょうか。

坪田 そうですね。ですから、長い詳しい記事を書いたら、冒頭のパラグラフ二つくらいは無料にし、その後は有料というのが私はいいと思っています。累進課税ではありませんが、課金は、できるところにしたらいいのです。誰でも使えるスタンダードルームは安く、奥座敷は高いけれど内容もばっちりという風に分けます。

 特に私のいた日本経済新聞には、「1万円払ってでもいいから読みたい」と言ってくださる方がいました。ならば、必須の情報だと思ってくださる方には分厚く提供し、その分お支払いいただけばいい。

 これまで新聞というのは、BtoBのビジネスだったんです。新聞社の顧客は販売店。販売店がどういう顧客に配達して売っているかは判っていませんでした。こんないい加減なビジネスはないわけです。そして、一年間購読してくれれば半額とか、いろいろな景品を差し上げますとか、いわば浮気なお客にばかり優しかった。

 その一方で、ロングユーザーのことは優待しないできました。しかし、こんなビジネスはありません。携帯電話の料金だって、長く使えば安くなるではないですか。まだまだ、これまでの常識だと思っていたことで見直すべき点は多いのです。

未来を予測する最善の方法

岩瀬 実は私がこの会社を始めたとき、IT業界の方から「保険料ってタダにできないの」と言われたんです。まさに「フリー」ですよ。法律上も様々な制約があるので、「なんてことを言うんだ」とそのときは思ったのですが、よく考えてみれば、そうおかしな話でもないのかなと思うようになってきました。

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