2010.03.03

生命保険だって無料の時代がやってくる

著書を無料公開した「日本版フリー」の衝撃 (後編)
現代ビジネス

坪田 法的な縛りを別にすれば、リスクを平準化するシステムを作れれば、それも可能でしょう。そのリスクを償却する方法をどう見つけるかにかかっているでしょうね。もうひとつ考えられるとすれば、保険料は無料でも、それ以外のところで会社が儲かるというビジネスのバリエーションを揃えることでしょう。

 例えば新書の価格は800円前後のものが多いのですが、他で儲けるから500円というものがあってもいいし、他の部分での投資も回収したいから1500円というものもあっていいと思うのです。

岩瀬 たとえば生命保険でも、これまで日本の生命保険は家族向けの商品が多かった。だから遺族のために死亡保障など重視していました。今度、私のところで売り出した商品は、働く人、自分のための保険なんです。生命保険のような歴史ある市場でも、まだまだ新しい商品、需要の開拓余地はあります。

坪田 今の日本の出版社は、黒船がやってきたときの江戸城の老中のように「どうしよう、どうしよう」と言っているだけ。その15年後に武士階級そのものがなくなることに思いが至らなかったんです。

 ただ、私は評論家になるつもりはないのです。今の出版ビジネスをひっくり返す仕組みを作るつもりでいて、一緒にやってくれる人や出版社がいないか探しているところです。 人間は、それまで自分がいた世界の常識こそが常識と思っています。しかしそれは、いつか必ず非常識になります。新しい常識は、作らないとならないんですね。パソコンの父と言われているアラン・ケイは「未来を予測する最善の方法は、未来を発明してしまうことである」と言っています。これからの常識も、これから作っていくものです。

岩瀬 そうおっしゃっていただくと心強いです。新聞業界と生命保険業界は、実は似ていて、同じ問題を抱えています。それは、ほとんどの販売店やセールスパーソンが、一社専業であることです。

 こういった非効率的な部分も含めて、私たちは、生命保険の仕組みがおかしいと思ったので、保険料半額をかかげて、業界に殴り込みをかけました。小さな会社ですが、池に投じられた小さな石のように、波紋を広げて行ければいいと思っています。

坪田 その通りです。シスコシステムズという通信の大手企業のCEOが幹部を集めて、こんな質問をしたことがあるそうです。「われわれの敵は誰か」。幹部たちは「IBM」とか「マイクロソフト」と答えるのですが、そうではない、と。「本当の敵は、ここにいる誰もが知らない小さな会社だ」とCEOは答えるのです。

 もはやよく知っている大企業は敵ではないということですね。大きくなってしまった企業は意思決定が遅くなって、つぶれていくだけ。平家物語にあるように「たけき者も遂には滅びぬ」です。

 トヨタ、GM、かつてのカネボウ、みんなそうです。その点、小さな会社こそ、これから大きくなっていくしかありませんから、小さなことはいいことです。どんな英雄だって、みんな赤ちゃんだったわけですから。

岩瀬 ありがとうございます。その言葉を励みに頑張っていきます。

坪田 私も新しい時代のメディアの行く先を見るために、まだまだ頑張りますよ。

『生命保険のカラクリ』のページ

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