個人主義が罷り通るこの時代、周囲を明るくし、細かい気配りを〝条件反射〟でこなす体育会系は、世間でもかわいがられるのだ。
前出の松尾氏も、自分が一人前の社会人になれたのは、体育会という環境のおかげだと熱っぽく語る。
「『気絶してしまった方が楽』といわれた目黒高校のしごきに耐えて、自信や度胸がついた。そしてそれ以上に、上の人たちの教えてくれることを素直に聞ける人間に育った。それが良かったんだと思います。
会社でも『ふざけんな、俺は全日本の松尾だ』なんて思ってたら終わってましたよ。『ラグビー以外全然知らない。教えてください』と言えたから周りに好かれた。そうして教わりながら人は成長していくんです」
苦しい日々で強くなるのは、肉体だけではない。辛かったはずの体育会の思い出話をする人が、どこかすがすがしい表情なのは、そのせいかもしれない。
「週刊現代」2012年2月4日号より