生かせなかった補欠制度

たとえば土佐礼子選手の場合、「外反母趾」と公表していました。「実は中足骨の炎症なんです」と私が関係者から耳打ちされたのは、試合当日の北京のホテルでのことでした。それを聞いて愕然としたのは言うまでもありません。
しかし、野口選手に続いて土佐選手までもが辞退となれば、これは陸連の大失態になります。本人は否定していましたが、とても欠場が許されるような雰囲気ではありませんでした。
もし陸連が代表選手たちの故障の状態を正確に把握していれば、早めに補欠選手に準備させることもできたはずです。しかし藤原新選手と、森本友選手に出番はありませんでした。いったい、何のための補欠制度だったのでしょう。
マラソンは過酷な種目です。選手はギリギリまで自らを追い込みます。その過程で、ケガをしたり、故障を悪化させたりする選手が出てくることは止むを得ません。メダルを獲るということは、そのくらいリスクを伴うものなのです。
そうであればこそ、陸連は選手たちの情報を管理し、万全のサポート体制を敷かなければならないのです。陸連には「選んだから終わり」ではなく「選んでからが仕事」と考えていただきたい。これからは補欠選手まで含めたチームジャパンの総合力が問われることになります。「北京の教訓が生きた」といえるロンドン五輪になることを願っています。