東京では分からないハシズム台風、猛烈な勢い 生データ公開衆議院48選挙区4800人に本誌がアンケート 橋下「維新の会」
近畿地区で全勝!前原、谷垣も落選民主、
自民は歴史的大惨敗
この男にとって「独裁者」などという批判は、屁でもないのだろう。むしろ批判されるほど、「改革者」のイメージが増幅され、熱狂の渦が沸き上がる。「維新」という名の台風は、西から吹いている。
前原、樽床は大差で負け
「既存政党に期待できないから」(42歳男性)
「何だかんだと言って、行動に移さない政治家が多いなか、すべてが正しいとは限らないが、行動を起こす、決断をする姿勢は評価できると思います」(52歳男性)
「とりあえずの政策・対策ではなく、根本的に制度を見直していこう、という気持ちを感じる」(31歳女性)
独裁者、ハシズム、ヒトラー・・・・・・。東京では政治家や識者が、橋下徹大阪市長がいかに危険な存在かを喧伝している。自民党の谷垣禎一総裁も地元・京都の講演で、橋下氏について、
「政党政治が駄目だということで昭和10年代に日本で軍部が出てきた。ヒトラー、ムッソリーニが出てきた時もそういう雰囲気だったのだろう」
と警戒感を露わにした。
冒頭に挙げたのは、その谷垣氏の選挙区である京都5区で、「いま衆院選があるなら橋下『維新の会』の候補に投票したい」と答えた有権者に、その理由を聞いたものである。橋下氏には批判的な有権者でも、いまの政治に嫌気が差しているという点において、こうした声に同調する人が大半ではないか。
批判が上がれば、その批判者の名前を挙げながら激しく反論するのが橋下氏の特徴的な政治手法。その是非はともかく、関西風に言えば、極めて「リアクション芸」に秀でた政治家であり、それが関西人の心を掴んでいるのは間違いない。
では、実際のところ、橋下氏および「大阪維新の会」は近畿地区でどのくらいの支持を集めているのか。
本誌は3月27日、近畿2府4県の衆院選全48小選挙区の有権者各100人、計4800人を対象に緊急アンケートを行った。調査は専門業者がインターネットを使い、組織票や一人の人間が複数回、回答できない仕組みになっている。質問内容はいたってシンプルで、(1)いま衆院選があったらどの党の候補に投票したいか、(2)橋下市長を支持するか、そしてその回答理由を問うものだ。
結果は、いくら橋下人気が高い近畿地区とはいえ、驚くべきものだった。
橋下「維新の会」、48選挙区で全勝---。
そう、問(1)については、すべての選挙区で「維新の会」が自民や民主を抑えトップになったのである。
もっとも激戦だったのは先の谷垣総裁の選挙区である京都5区で、維新支持20人に対し、自民支持19人。腐っても自民党の総裁、それがまだ見ぬ維新候補の前に敗北する。いかに「維新」の風が強いかが分かる。なかには大阪5区のように民主支持がたった1人で、維新支持が52人というような選挙区もある。
全体で見れば4800人中1615人、33・6%の有権者が、いま衆院選があれば維新の会の候補に投票すると回答。次いで自民党が9・9%、民主党にいたってはわずか5・0%。以下、みんなの党4・3%、共産党3・1%、公明党2・6%、まだ決めていないという人が40・1%という結果になった。
ちなみに本誌と同様の調査を読売新聞が3月16日~18日に行っているが、その結果は維新支持24%、自民18%、民主10%となっている。こちらの回答者は2079人(うち大阪在住890人)であり、本誌の半分以下だ。
本誌調査を府県別に見ると、近畿圏のなかでももっとも維新支持者が多いのは、やはりお膝元の大阪で42・1%。奈良(32・2%)、和歌山(29・0%)、京都(28・6%)、兵庫(26・9%)、滋賀(26・0%)と続く。
各選挙区の生データについては最終ページの円グラフを見ていただくとして、この調査結果に肝を冷やす現職議員は多いだろう。
たとえば、野田内閣の閣僚を見ても川端達夫総務相(滋賀1区)が8対31(上が民主支持、下が維新支持。以下同)、藤村修官房長官(大阪7区)が4対42、平野博文文科相(大阪11区)が8対34と大きく水を開けられている。党のナンバー2である樽床伸二幹事長代行(大阪12区)も5対37で、政府ナンバー2の官房長官と党ナンバー2が、そろって「ハシズム台風」に吹き飛ばされる可能性が濃厚である。
「民主党のなかでは前原(誠司)政調会長が、橋下氏と頻繁に会合を重ねているが、基本的に声を掛けるのは前原サイド。次の総理という自負が強い前原氏は、もともと橋下氏を相手にしていなかった。
ところが、昨年11月の大阪W選挙で橋下氏が圧勝した直後の会合で、橋下氏が『党運営や人事はすべて松井(一郎・大阪府知事)さんに任せている。自分は維新の会の名前を売るための尖兵として、なんでもやりますよ』と語るのを聞いて、思ったよりもクレバーだと感心すると同時に、敵に回すと厄介だと危機感を抱いたようです。いまや前原氏は自分の党内でのポジションを守るために、橋下氏とのパイプを吹聴している」(全国紙政治部記者)
その前原氏の京都2区も、民主支持9人に対し、維新支持が26人。橋下氏が維新候補を立てれば、次の総理どころか当選すら危うい。