2012.05.09

磯田道史 第1回 「誰よりも古文書を愛し歴史をきわめた研究者が、誰よりも遊び込んだシマジに説いて聞かせる江戸時代の教育力と技術力」

島地 勝彦 プロフィール

シマジ おれだって古文書は読めないけど、本はいつも読んでるよ。

立木 シマジが本を読むのは当たり前。自分で本を作ってたんだから。読書は商売みたいなもんだ。

磯田 立木先生、わたしはシマジさんと会うと何か必ずいいことが起こるんですよ。今日もここに来るまでに神保町で珍しい忍者の古文書を発見して買ってきました。これは5、6年くらい探していた重要な古文書です。

立木 シマジの先祖は伊賀上野だけど、関係ないか。

磯田 この古文書は北陸のほうの忍者の家伝書です。すごく珍しいものです。

立木 これは印刷されたものなの。

磯田 いや手書きです。一家のために秘かに書かれた忍術の本です。当時忍者は医学も極めていましたから、こんな解剖図みたいな絵も載っているんです。

立木 なるほど。忍者の家に伝来した古文書なんだ。瀬尾はまだか。

シマジ もう来ますよ。

「本物の教養は武器になる」

ポンポンとインターフォンが鳴って、瀬尾編集長が汗をかきかき入ってきた。

瀬尾 スミマセン、スミマセン。

シマジ 別に謝ることはないよ。まだ2時前じゃないか。おれたちはイラチでもうやっているだけだ。

立木 おまえが早くこないから、おれは謝礼で売られたところだ。

瀬尾 どういうことですか?

立木 あとでシマジにゆっくり聞いてくれ。

瀬尾 はじめまして、瀬尾といいます。

磯田 磯田と申します。

瀬尾 磯田さんはたしか茨城大学にお勤めでしたよね。

磯田 それがこの4月から静岡文化芸術大学に移ったんです。

瀬尾 またどうしてですか。

磯田 古文書で本格的に過去の地震の記録を調べたくなり、ひとつには時間が欲しかったんです。地方の神社には神主が書き記した地震の古文書がたくさん残されているんですが、いまだ解き明かされていないままです。