2012.05.20

京都吉兆三代目、徳岡邦夫さんに聞く【第3回】
「一次産業のひとたちとナパバレーにジャパンタウンをつくりたい!」

第2回はこちらをご覧ください。

料理以外の世界へも視野を広げる、京都吉兆流の社員教育

安倍: 京都吉兆には海外からの研修生もきているそうですね。何人くらいいらっしゃるのですか?

徳岡: シーズンによって変わってきますが、多い時は、一度に2~3人です。

安倍: どこの国からいらっしゃるんですか?

徳岡: ヨーロッパ、アメリカ、アジアなど幅広いです。

安倍: 海外のシェフが修業のためにいらっしゃることが多いのですか?

徳岡: (海外の)レストランの研修制度や、料理学校からの推薦という方が多いです。シェフの場合、研究のために食べにくるという方が多いですね。

安倍: 日本人の若い人(料理人)の働きぶりは昔とくらべてどうですか?

徳岡: 変わりません。一生懸命ですよ。むしろ京都吉兆の仕組みの方が、変わってきています。昔のように、何も教えずに「(先輩から技を)盗みなさい」というスタイルではなく、いまは何でも教えています。

安倍: やっぱり昔は何も教えないというスタイルだったのですか?

徳岡: 何も教えず、下働きからはじめてもらうというスタイルでした。今は変えています。給料を払っているので、早く習得してもらわないと、効率が悪いですからね(笑)

 先輩には、「後輩にきちんと教えなさい。後輩が何もできないのは先輩の指導が悪いからだ」と伝えています。昔の料理屋には、料理をせず、マネジメントに徹するご主人がいて、その下に料理長がいるという形でした。ですので、昔の料理長は、後輩に全てを教えてしまうと自分の立場が危うくなるからと保身のために、下の人たちに料理を教えないという状況があったわけです。

 京都吉兆では、料理長が一番上のポジションではなく、もっと上のキャリアパスを提示しています。料理長には、「早く役員になってくれ」と。そういう仕組みをつくることが大切なんです。

安倍: なるほど。仕組みをつくり、今の時代にあわせ改革しているのですね。

徳岡: 京都吉兆では、料理長や管理職向けに勉強会を実施しています。公認会計士の先生をお招きして会計学や、戦略・ロジカルシンキング・マーケティングの専門的な勉強をしたりと多彩なプログラムを用意しています。

 勉強会では、管理職向けにテストを実施し、その結果を評価・給与に反映しています。一般社員も、役職者に勉強会の内容を教えてもらったり、ビデオ撮影した勉強会の様子をみんなで見たりしています。

安倍: みなさま、勉強熱心ですね!

徳岡: この他、工業デザイン、企業ドメインについてなど・・・毎月「推薦図書」を発表し、全社員に様々なジャンルの本を読む機会をつくっています。

 社員は、本の内容をまとめて感想文を書き、部長に提出する。それを各部長が評価し、内容を給与にも反映しています。

安倍: 社員のみなさまからの反応はどうですか?

徳岡: はじめは、「なんでそんなことしないといけないのか」と文句を言う人もいました(笑)。でも今は反対する人はいないです。

 これまで厨房の人間は料理のことしか知らず、料理の話ばかりしていましたが、今では厨房で株価の話題がとびかったりと、話す内容も明らかに変わってきました。

 もちろん料理人ですので料理を知ることは基本ですが、料理が他の様々なものに通じているのだということを感じているのです。料理以外の世界を知ることで、好奇心が刺激され社会に対する視点が変わってきているので、人生の楽しみが広がり、みな喜んでいるようです。

安倍: 料理人は気難しい人が多いイメージでしたが・・・色々なお話をしているのですね。

徳岡: 物事を知らないと、気難しそうに無口でいた方が、格好よく見られやすいですからね(笑)。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら

関連記事