ドン こんなことでシガーの旅に行けないなんてことになったら、あとでシマジさんに何を書かれるかしれない。高熱よりもそっちのほうが怖かったんですよ。
瀬尾 "ペンは高熱より強し"ですね。
シマジ でもハバナのホテルに着いてからがすごかった。
ドン そうそう。ボルタレンっていう解熱剤の座薬をケツからぶち込んでシマジさんの部屋に押し掛けたんだ。
シマジ おれも少々のことでは驚かないが、ドンさんは部屋で休んでるのかな、と思っていたら、突然、元気な姿で現われたのには腰を抜かしたね。しかも「さあ、これから飲もう」って言うんだよ。
ドン 熱が37度に下がったからね。
シマジ それから夜が白々と明けるまでキューバン・ラムを2人で1本飲んだんだからね。しかも葉巻を何本も吸いながらだよ。
ドン そしたらまた熱が出てきたので「シマジさん、もう一発ボルタレンをぶち込んでくる」って一端部屋に戻ったんだっけな。
シマジ そうだったね。この人、無茶苦茶なんだよ。
立木 なるほど。ドンさんは男としてシマジの好きな"ロマンティックな愚か者"っぷりを発揮したんだな。
シマジ おれは心配しながら感動したね。
ドン それから部屋に帰って、ぶっ倒れて寝ましたよ。長いこと人生をやっていると、ああいうときってあるんでしょうね。逃げられない瞬間みたいな・・・。
シマジ でも荒療治が効いたのか、そのあとはずっと元気だったよね。
ドン まぁ、あれはカラ元気というか、ボルタレン元気だったんだね。